コストコ創業者「ホットドックを値上げしやがったらお前を殺す、わかったな」
「あのホットドックの値上げをしやがったら、殺す。わかったな?」
(Costco共同創業者、元CEO、ジム・シネガル)"If you raise [the price of] the effing hot dog, I will kill you, figure it out."
(by Costco co-founder and former CEO, Jim Sinegal)
みんな大好きCostco。
アメリカでは「コスコ(発音:コォスコゥ)」なので、どうも「コストコ」と書くと背中がムズムズとします・・・。
日本のCostcoに行ったことがないのですが、日本のCostcoでもフードコートってあるんですか? そして、ホットドックと飲み物のコンボセットって売っていますか?
アメリカのCostcoでは、ホットドックと飲み物のコンボセットが1980年代に初登場して以来変わらず$1.50(約150円)で売られています。
それを巡ってなにやらクールなやりとりがあった様子。数年前の会話のようですが、最近またソーシャル・メディアでバズって脚光を浴びました。
冒頭の発言をした方は、Costcoの共同創業者の一人にして元CEOのジム・シネガル。このやさしそうなおじいさまです。
上の写真でも、Costcoのフードコートをバックに嬉しそうに笑顔を見せていらっしゃいますが、問題はまさにここで売られているホットドックと飲み物のセットの値段のこと。
現CEOのクレイグ・ジェリネックさんが、ジム・シネガルさんのところに行って、コンボの値段が安過ぎることを、「ジム、我々はもうホットドックを1.5ドルでは売れないよ、どんどん赤字になっている」と愚痴ったら・・・
ジム・シネガルさんは黙ってうんうんとうなずいて聞いた後、
「値上げしたら殺してやる。わかったな。」
という冒頭の言葉を言ったとのこと。
もうその一言で充分彼の言いたいことはわかった、というクレイグ・ジェリネックさんは、値上げをせずに会社の支出を抑えることを迫られます。その時点では、1.5ドルのコンボに実際は1.75ドルがかかり、しかもそれが年間ウン百万個、全米のMLBの球場で売れているホットドックをすべて合わせた数よりも売れていたわけですから、赤字の金額は確かに無視できない額になっていたはず。
それでも、創業者がこの値段にこだわったのは、値段や赤字以上の価値をここに見出していたのでしょう。
このホットドックを、Loss Leader(ロス・リーダー、あるいは単にリーダー)と考える人が多いと思いますが、そうでもないようです。
Loss Leader:日本でもよく用いられているマーケティング手法で、採算度外視で売られる商品。それにより顧客を店まで来させ、他のものも買わせることで儲けを出すことを狙いとした商品。
このホットドック・コンボを25セント(25円)の赤字で売ることは、ロス・リーダーとしても割にあわなかったようですが、それでも現CEOはあの手この手で努力を続け、値段を維持しています。
Costcoに来て買い物したお客さんは、ホットドックのセットを楽しみ、満足し、元気になる。店を出る直前に食べたら、お客さんは大切にされたという長く変わらぬ印象を持って帰るだろう。インフレに追いついていく以上の価値があるんだ。
Customers coming in to shop at Costco are amused, satisfied, and fueled by the hot dog meal. If they get it just before leaving the store, they're left with a lasting impression of being treated well. That's worth more than keeping up with inflation.
上記は、創業者に脅された(?)後の現CEOの言葉。
結局Costcoは、卸売業者を通さず自社のホットドック工場を作りそこで生産することでコストをカット。セットの飲み物のチョイスの一つであるコーラが値上げするとなれば、ペプシと契約。カリフォルニアがソーダ税を導入し、顧客がホットドック・コンボを買うたびに税金をとられるとなったら、その地域のみペプシをダイエット・ペプシに変更(ダイエット・ペプシはソーダ税対象外)。
同じくLoss Leaderとして名高い4.99ドルの鶏の丸焼きも、結局インフレ対策で自社の農場を作ってそこの鶏を売るようにしているとのことです。
経営者や株主よりもお客様のことを考えて企業努力を惜しまないCostco・・・素晴らしいと思いませんか?
お客様優位が過ぎて、ちょっと物騒な元CEOは2009年のシアトル・タイムズ紙のインタビューでもこんなことを言っているようです。記者に「ホットドックの値段が上がったら、それは何を意味すると思いますか?」と聞かれ・・・
「私が死んだ、という意味だ。我々はあのホットドックで知られているんだよ。そういうものはいじっちゃいけない。」
“That I’m dead. We’re known for that hot dog. That’s something you don’t mess with.”
もう引退されている方ですが、俺の目の黒いうちは値上げはさせない、という固い意思が感じられます。