WRITE, DREAM, LIVE

アメリカ在住の日本人がいろいろ書き散らす

WBC、悲しいくらいアメリカで盛り上がってない


Image by Gillian Callison from Pixabay

 日本チーム、WBC優勝おめでとうございます!!

 試合はまったく観ていないけれど、日本のニュースが連日それ一色、ソーシャルメディアもその話題でもちきりなので、おそらくワールドカップ以上の騒ぎになっていることでしょう。 羨ましい、じつに羨ましい。祭りに参加できないこの寂しさよ・・・アメリカで開催されている大会だというのに!!
 アメリカでやってるんだし、アメリカチームだって強いんだから、もっとWBC自体がアメリカのメディアで取り上げられて大騒ぎされてもいいと思うんですけどね。私は、日本でいう所の「中規模の地方都市」という感じのところに住んでいるわけですが、おそらく私の居住地域のアメリカ人のほとんどはWBCの存在自体を知らず、今夜が決勝だったことすら知らないと思います。野球やってる人とか野球のファンなら知ってるでしょうが、そういう人たちが本当に少ない。これって、日本人がイメージする「アメリカ」、つまりカリフォルニアとかニューヨークとかハワイとかそういう有名大都市近辺に行けば違うんだろうか。

 でも、私、アメリカのニュースメディアがその日の注目ニュースを紹介してくれる毎日更新のポッドキャストを数種類聞いてるんですけど、それらでもやっぱりWBCが日本のようにはニュースになっていない。最近のスポーツの話題と言えば、春の大学バスケの話題ばかりなんです。日本で言うと甲子園みたいな感じで、皆さん自分の出身校とか故郷の大学を熱烈に応援したり職場でお金賭けたりして盛り上がる、アメリカ人の春の大注目スポーツイベントなんですけど、それと今回のWBCがばっちりかぶってまして。ニュース系のポッドキャスト聴きながら、WBCの話題は無いんかい、と虚しさが募りました。
 そして昨日、やっとUSA Todayのその日の5大ニュースを教えてくれるポッドキャストで、「アメリカチームがWBCの決勝進出を決めました」というニュースが。おおついにWBCの話題がニュースに来たぜ!と思ったら、アメリカチームに関してはほとんど触れず、「対戦相手はメキシコを破った日本です」と日本の話題になり、
「日本では準決勝戦の視聴率が48%、なんとこれはこの間のスーパーボウル(アメフトのリーグ頂上決戦の試合)のアメリカ国内の視聴率より高かったということになります。どれほど日本で盛り上がっているかおわかりでしょう。それでは、決勝進出が決まった瞬間の日本の試合の実況の音声をどうぞ!」
という流れに。そして、サヨナラ弾に狂喜する観客と日本の実況の方々の音声が流れ、「ワーオ、すごいですね」みたいな感じで終わってしまった・・・。おいおい、USA Todayさんよ、アメリカチームが決勝行ったことより、日本での異様な盛り上がりのほうにニュース性あるってことかい? 
 なんかほんとにね・・・どうして野球はアメリカでこんなに人気無くなっちゃったの? 野球、好きだから、MLBとかWBCとかがもっと盛り上がってくれないと、みんなの大好きなオオタニさんがいくら頑張っても彼の素晴らしさは伝わらないのよ。あと・・・、野球不人気だけがWBC不完全燃焼の原因じゃなく、アメリカ人って、なんかあんまり世界に目を向けないところがある感じがする。WBCだけじゃなくて、オリンピックとかサッカーのワールドカップの視聴率も関心度も低い。日本みたいに盛り上がらない。アメリカが世界。自分の住んでいる州が国。アメリカという世界が大き過ぎてその外のことまで考えていられないってか? それともなんだかんだで自分の国がナンバー1だから、その中でわちゃわちゃナンバー1競うようなスーパーボウルとかワールド・シリーズみたいなイベント以外はどうでもいいってか? なんか・・・ヤな感じ!!
 しかしまあ、そうした国民性は置いといて、今回WBCの日本における熱狂みたいなのがアメリカで全然無かった背景に、アメリカ国内の野球人気の下降があるのは確か。特に、若ければ若いほどその傾向は顕著で、野球がブーマー世代の過去の遺物になりつつある。つまりおじさんおばさん、おじいさんおばあさんの娯楽になっちゃっているということ。MLB、さすがに無くなりはしないだろうけど、そろそろ若い世代の敏腕改革者とか雇って頑張らないとまずいと思う。

 人気低下の原因は、いろいろあるんだけど、だいたい以下のような感じ。

1)昔は野球くらいしか人気スポーツが無かったが、他にもいろいろ選択肢が出て来た

 これにつきるのでは、という意見も多い。おじいちゃんおばあちゃんの時代は、近所の子供たちで野球して遊んでいて、試合のルールを知らない子はいなかったのに、テレビ文化の発展で、アメリカン・フットボールやらバスケットボールやら、最近ではサッカーも子供たちの知るところに。現在の動画配信チャンネルの競合もそうだけど、人々の限られたテレビ視聴の時間をそれらのほかのスポーツと競って奪い合う中で、野球がかつてほどの圧倒的な人気を保てなくなった、ということ。

2)若い世代のアテンション・スパンの短さに合っていない

 では、なぜほかのスポーツとの視聴競争に勝てなかったのかと言うと、現代人の忙しいライフスタイルに合っていないというのも一因。確かに、アメフト、バスケ、サッカー、ライバルである他のスポーツはすべてカチッと時間が決まっている。ハーフタイムや審判が時計を止める時間を含めても、だいたい2時間以内には終わります。しかし野球は確か平均3時間。延長にもなりうる。「とにかく試合が長い」というのはよく聞きます。しかし、私は野球やテニスのような終わりがわからないスポーツは、「最後の1アウト(テニスの場合は最後の1ポイント)まで理論上はどちらが勝つかはわからない」という面白さがあると思うんですけどね。時間で区切られてしまうスポーツはそれゆえのドラマもありますが、残り時間から考えると逆転は無理だと途中で分かってしまう白ける試合も多いじゃないですか。そんなスポーツばっかりでもねえ。終わりがわからないのが野球のいいところなのに。しかしまあ、私のようなヤツは若い世代にはいないようです。あと、試合だけではなく、シーズン自体もダラダラと長い、試合数も多い、これもウケない理由らしい。確かにバスケ、アメフトはシーズン短いですね。

3)試合が退屈

 止まってる時間が多い、エキサイティングな動きがあまり無い、ということらしい。これからは野球選手には、つねに飛んだり跳ねたり踊ったり、ちょっとのことで乱闘騒ぎしてもらうしかないな。真面目な話、年間本塁打記録が長い間破られなかったことからもわかる通り、今のMLBが完全に「守備優位」つまり「ピッチャー優位」になってしまっている、ピッチングの進化に対してバッティングの進化が遅れて三振ショーが多くなってしまった、というところがどうやら「退屈」ととられるようです。つまり、豪快に投げて豪快に打って華麗にスライディング、華麗に守備、とにかく激しさが欲しいということらしい。これは・・・もうボールを大きくするしかないか?

4)年俸のキャップが無いため、金満球団ばかり勝つ

 アメフトやバスケのリーグと違って、MLBだけが選手のサラリーに上限を設けていない。ということは、金を持っている球団がいい選手をとる時に圧倒的に有利になってしまう。弱小球団は勝ち目から遠ざかることになってしまい、そうなるとファンの足も関心も遠のき、ますます経営が悪化し、良い選手がとれなくなり・・・といった悪循環に陥るわけです。これは、弱小球団の地元での野球人気を低下させ、野球人気の底辺を縮小している原因のひとつ。

5)スター不在

 アメフトやバスケを普段熱心に観ない人でも、この間引退したトム・ブレイディやレブロン・ジェームスが誰だかアメリカにいる人ならだいたいみんな知っているものです。ゴルフやらないけどタイガー・ウッズは知ってるしマキロイとか聞いたことあるよ、という人も多いでしょう。そういう格のスターがMLBからもう何年も出ていない。大谷さんがいるじゃないか、と言いたいけれどまあ彼はアメリカ人からすると外国人だし、ちょっと規格外ということで置いといて、今のMLBアメリカ人スターというとマイク・トラウトさんとかになると思うんですけど、トラウトの写真を見せられても名前を聞いても大半のアメリカ人はピンと来ないはず。MLBにとって10年に一人のスターであっても、「数年に一度」レベルのアメフトのクオーター・バックに知名度で負けている。どうやらMLBも売り方が下手なようで、MLBのスタープレイヤーで、他のプロスポーツリーグの選手のようにSNSを使ったプロモーションに成功している人が少ないらしい。確かに、トラウトやブライス・ハーパーさんやオオタニさんがインスタでバズっているところとか想像できない。なぜだろう。優秀な「中の人」を雇って、SNSでも頑張ったほうがいいのかもしれない。野球ってなに?って人も試合を観てみようかしら、というような個性をSNSで発揮できるような発信力のある選手がいてもいいのかも。炎上商法担当選手を作るとか。

6)外国人選手が多い

 これは5)にも関係する難しい問題。外国人が集まってくるということは、世界最高のレベルのリーグということでそれ自体にはなんら問題は無く、MLBファンも外国人がたくさん来て誇らしい、と考えている人も多い。でもどうしても言葉の壁があって、外国人選手がスター選手の場合、その選手をプロモートするのが難しい。つまり、外国人選手と言うと、テレビのトークショーなんかに出てバンバン自分の言葉で話してくれたり、少年少女たちに「たくさん練習しろよ、一緒にプレーする日を楽しみにしてるからな!」と肩を叩いてあげるような自然なファンサービスをするのが難しい。やはり「英語が話せる人のほうがいいなあ」になるわけです。野球選手なんだからプレーで人気とればいいじゃない、と言われるとそれは確かに真実なんだけど、ほかのスポーツと競って人気集めないといけないとなるとそうも言っていられないというか。外国人選手は、どうしてもファンとの間に少し距離ができてしまうのですよね。しかし、それ言ったらヨーロッパのサッカーリーグとかもいろんな国の選手の寄せ集めなわけで、言葉の問題はあるはずだけど、外国人でもスターはスターなわけで・・・。どうして「外国人だとスターになれない問題」がサッカーでは起こらないんだろう? それとも、サッカー選手は日本の相撲界で活躍している外国人力士さんたち並みにみんなそのチームのある国の言葉が流暢なのか。テニス選手でも英語に困ってるプロ選手ってあんまり見たことないし、MLBだけ外国人選手の英語普及率が低いのか? MLBは外国人選手の英語教育に資金つぎ込んだらどうだろう。

 以上、あまりにもアメリカでWBCの扱いが小さいので、アメリカでの野球不人気をちょっと考察してみました。2)と3)の「試合が長くて退屈」に関しては、どうやらMLBは今シーズンから大改革するらしく、投球までの時間とか打席に入るまでの時間とかを制限して試合をスピーディーにしようとしているみたいですね。ちょっと楽しみ。そうそう、いろいろやってみたらいいと思う。あと、プレー以外でも個性的で面白い選手がもっと出てくるといいなあ。あと、怪我を少なくするような何か・・・怪我で離脱もがっかりだし、それも何か対策してほしいですね。

 とにかく、日本チーム、おめでとう! 日本の皆さん、思い切り喜んではじけちゃってくださーい!!