Frontline Worker の苦悩 その1
2021年になってほんの少ししか経っていないのに、しょっぱなから日本もアメリカもいろんな意味で大荒れ。
ワシントンの国会議事堂暴動事件のニュースでもちきりのアメリカですが、それよりなによりやはりCovidです。そっちのほうがまずいんじゃないのか、と暴徒の集団を見て思う。あの集団に関しては勝手にやってくれと言いたいところだけど、またマスクをしていないあいつら数千人が家に戻って、全国各地にウィルスをばらまくと思うともう・・・。歩くスーパースプレッダー。無力感しか感じない。
余談ですが、パンデミックの初期の頃は、皆さんネットでも会話でも「Corona」とよく言っていたけれど、今は報道で新型肺炎の呼び方が「Covid-19」に統一されたせいか、会話やネットでも「Covid」と呼ばれたり書かれたりすることが多くなった。
新型肺炎の病気そのもの=Covid、
その原因=Corona Virus
という感じ。若い子たちは、スラングで「Rona」とか書いたり言ったり。
「コロナになる」とかそういう表現は少なくなり、「Covidになる、なった」という感じで使う。言葉も短期間ですごい勢いで変わって行っていると感じる。
数か月前から、ニュースなんかでよく聞かれてるようになってきたのが、
「Frontline worker」
という言葉。社会の機能に必要不可欠だけど、職業上どうしても在宅勤務ができない労働者たちを総称して指す。医療従事者はもちろん、スーパーの従業員、ゴミの収集をして下さっている方々なども含む。「フロントライン」っていうと戦争の「前線」っていう意味があるけれど、ウィルスが戦争時の銃弾のようにバンバン飛んでくる危険な前線に立たされている方々なので、そのまんまの言葉だなと思う。
その中でも、やはり一番苦しい立場が報告されるのがやはり看護士。
看護士がここまで注目されたことはなかったのでは、というくらい。パンデミックが長引き、医療崩壊がアメリカ各地で起こるようになってきて、看護師からの現場の声が次々報道されるようになってきた。
アメリカで病院にかかるとわかるけど、医者の診察なんて数分で終わりで、そこに行くまでのすべては看護士がやっている。看護士が患者に接して、すべて準備して、医者はそこに来てちらっと顔出して次に行くだけ。看護士は、医者がいかに一人の患者にかけられる時間を短縮するかのサポートを迫られている感じだった。医者はそれぞれの患者と接するのなんて実際はほんの少しなのだ。
だから、医者より看護士からの報告のほうがずっと生々しい。
現在、カリフォルニア州が既に集中治療に空きが無く、限界に達していると聞いている。患者は文字通り病院の廊下、売店で治療を受け、医者が、
「場所はなんとか増やせても働いてくれる看護士がいません。普段は自給80ドルくらいのところを200-300ドル出すと言っても必要な人数は集められません」
とNPR(国営ラジオ放送)で言っていた。
私の古い友人の一人に他州で看護士として働いている女性がいる。その方をEさんとしておくけど、Eさんが昨年私の住む街に来た時に久々に会った。もう約半年前のことだけど、炎天下でマスクをしながら散歩して話した時の会話・・・
日本が厳しいロックダウンをしていないのに死亡率や感染率が低いことを話題にしようとして、「ねえ知ってる? 日本では死亡率が・・・」と言いかけたら、
「VERY LOW!! VEEEEERY LOW!!! BECAUSE THEY ARE DESCIPLINED!! 」
とものすごい勢いで遮られた。
Japanese are disciplined.
disciplined、規律ある行動ができる、という感じかな。
「死亡率低いよね、日本人はきちんとしているからだよ!!」
そして、彼女は続けて吐き捨てるように言った。
「Americans are stupid. STUPID!!!」
そういうあなたもアメリカ人・・・なので、「そんなこと言わないで、遺伝子の違いとかそういうのもあると思うし・・・」などとおろおろ言うしかなかった。
しかし、Eさんは怒り収まらない口調で続けた。
「私の働いている病院はもう安全な場所じゃない。知っている看護士は感染して死んだ。聞いてよ、先週、20代の男が病院に来たの。Covidじゃなくてまったく関係ないことで来たんだけど、無症状の陽性だった。どこで感染したか心当たりがあるかと聞いたら、Covid-19パーティーで感染したと思う、って・・・。Covid陽性の人を一人招待してパーティーやって、自分たちがウィルスより強いことを証明するパーティーだって言ったんだよ!!」
そして、こめかみをぐりぐり指で押しながら、
「Americans are stupid. So stupid...」
と疲れた顔で繰り返しておられました。
彼女とこの会話を交わした少し後、別の州で、Covid-19パーティーに参加した30代の男性が亡くなったというニュースを観た。体力に自信のある人たちの間で本当にCovidパーティーは流行っていたらしい。
どんな人が運ばれて来ても、その人のために働かなくてはならない看護士の辛さ。ストレスや疲労で免疫力だって下がっているだろうし、看護士たち自身の感染のリスクは相当なものだろう。
前述のCovidパーティーが原因で亡くなった男性は、
「Covidなんてインチキだと思っていたんだ。でも、自分は間違っていた。Covidは現実だった。」
という言葉を残しただけ、まだ看護士たちも介抱を頑張れたところがあったかもしれない。中には最期までひどい態度をとり続ける人もいるという。<続く>