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アメリカ在住の日本人がいろいろ書き散らす

Year-round schoolを巡る議論 アメリカの夏休みは長過ぎるのか

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行く手に見事な夏雲 もちろんこのあと雷雨

 先日、子供たちの学校の一年が終わり、長い夏休みに入った。

 最後の日はそりゃもうお祭り騒ぎ。先生たちはもう嬉しくてにやけ顔を隠せていない。辛い一年が終わって、(給料付きの)長い休みに入るんですもの。私の子供たちの通う学区は、夏休みの日数、なんと 87日間!!!

「アメリカで学校教員になる三つの理由、それは、June, July and August」

というジョークがあったっけ。今年は先生方の顔が例年より、もっと輝いて見えた。大変だったもんね。命がけで学校を開けて、前例の無い状況で体を張って働いて下さいました。

 今度は、私たち親が頑張る番!!

 日本で、
「夏休みはお昼ご飯作らないといけないから大変、一日中ご飯を作っている気がする」
とか言ってるお母さんたち!! 一日中ご飯作るって言ったって、だいたいそれ一か月くらいで終わりませんか!? こっちは3か月続くからーーーーー!!!

 アメリカ広しと言えども、夏休みがだいたい12週間=約3か月というのは、だいたいどこも同じ。始まる時期は、地方によって多少の前後はありますが。

 かなり昔から続くこの「長い夏休み」の伝統。

 昔のアメリカの6-8月は、子供が農地の管理とか収穫の手伝いとかで人手として必要だったから・・・
 エアコンが無くて暑すぎて皆さん避暑に行っちゃって、夏期は学校やってもガラガラになっちゃうから・・

などなど、こうなったいきさつはあるにはあるんだけど、全部どれも今の時代にぜんっぜん関係無い。

 長い夏休みに対して、日本みたいな感じの休暇カレンダー、つまり一か月強の夏休み、2-3週間の冬休みと春休みをとる学校のことを「Year-round school」と呼ぶ。どちらも休暇日数自体は変わらない。休暇を設ける時季とその長さが違うだけ。

 長い夏休みとyear-round schoolに関しては、ディベートのテーマになるほど意見が分かれている。

長い夏休みのメリット
・ゆっくり休める
・アルバイトやインターンなどの就業体験がしやすい
・学校のエアコン代が節約できる
・一年で一番屋外でのアクティビティを楽しめる季節を屋内で無駄にせずに済む

長い夏休みのデメリット
・宿題無しの3か月で夏休み前の学年で習ったことを忘れてしまう
・夏休み後に忘れた勉強を取り戻すために授業時間がとられる
・家計が苦しい家庭の子供はやることがない(お金持ちの子供は留学したり、高いサマーキャンプに入れてもらえる)
・夏以外の季節で旅行したくてもまとまった休暇が無く、学校を休むしかない

 ・・・なんか、どう見ても長い夏休みのメリットってデメリットに比べて弱いと思うんですけど。

 実はもうyear-round-schoolにしたほうが子供の学力が総じて高くなる、というのは証明されていて、アメリカでもyear-round-schoolを取り入れている公立校は結構ある。
 私が以前住んでいた街でも、本来なら夏休みの真っただ中のはずなのに、子供がわらわらと運動場にいる学校があって、近くにいたアメリカ人に「なんで? 今日、なんかイベント?」と聞いたら、「この学校、Year-roundカレンダーに沿っているから、今日は普通に学校の日なだけでしょ」とあんた知らないのという顔で言われ・・・。そんな学校があるなんて、それはまるでJapanじゃないか! どうやったらこの学校に入れるの!?と鼻息が荒くなったけれど、あっさりと「すごい人気だから無理だと思う」だって。
 そして「私だって行かせたいんだけど、子供が複数いると、上の子が中学校に上がった時に、この小学校に通う下の子と休みがずれちゃうからねえ」。

 そうなんです、year-round schoolのデメリットってこれくらいしか無いと思う。つまり、小・中・高、一斉にそういうふうにしてくれないと、家庭内で従来の長い夏休みをとる子供と短い夏休みをとる子供がいるという状態になてしまう。一人っ子しか使えないシステムになってしまうというわけ。

 私は、実は長い夏休みはアメリカの格差社会の一因にもなっていると思う。貧乏家庭の子は、長い休みがあったってなにもできやしない。家でゲームしてるか近所の同じく暇な子とつるむくらいしかできず、それが三か月続く。親だって仕事で忙しい。その間、お金に余裕があるおうちの子は、日本で言う所の夏期講習に通ったり、家庭教師やベビーシッターを雇ってきっちり子供の面倒見させたり、大学入試に有利なアクティビティやらたっぷりできる。夏の三か月で、後で取り返せないくらい大きく差がつく。それが毎年毎年積み重なって行く。

 先生たちだって、実はyear-roundのほうが燃え尽きやストレスが少ないっていう調査結果もある。

 結局、長い夏休みの伝統が無くならないのは、「変化が怖いから」、これとあとはビジネスの都合だけのように思う。レジャー施設とかサマー・キャンプとかそういうビジネスは、長い夏休みでたんまり儲けているから。遊園地とかyear-round school導入には全力で反対じゃないかな。

 子供たちのことを真剣に考えたら、頭が柔らかくてどんどん吸収する二度と来ない大切な年齢に三か月も勉強無しでほったらかしにしないほうがいいと思うんだけど。絶対にアメリカ人の平均学力低下の原因にもなってるって。子供なんて、子供だからほっといたらろくなこと無い。日本みたいに読書感想文だの自由研究だのたんまり宿題あるのも、親としては頭痛がするけど。

 今後は、どの学区でも、小・中・高を通して、year-roundのカレンダーを選択できるオプションを設けるようにしてほしい。つまり、長い夏休みか日本型の夏休みか、家庭に選択権を与えて欲しい。それか、どうしても長い夏休み制度を維持したいなら、無料で夏期講習開催とかスポーツ教室とか、何かお金が無い子も参加できること、できませんかね? はっきり言って、子供だって、学校が休みになって喜んでいるのは最初の1-2週間くらいで、あとは暇そうです。

 無料で公園でランチ配布するのはやってくれてるんですけどね。

 もう、食べ物以上のことはできかねますので、まああとはせいぜい頑張って学校始まるまで生き延びてね・・・ってか・・・?

 その公園ランチも、親が車で連れて行かないと行けない場所だったりするし、結局学校側が色々用意してくれても子供に移動手段が無いとどうにもならないわけで・・・。

 子供は生きづらいよね、本当に。頑張って行き延びるんだよ。