花粉症は治せるのか? Immunotherapy(免疫療法)の経過メモ(1)
私と花粉症
それは18歳、高校三年生の時に突如始まった。
それまでは、春先に鼻をグズグズ言わせて「花粉症なの・・・」と元気が無い友達を「ふーん、大変だね」と完全に「他人事」の立場で気の毒に思っていたのに。
気候が爽やかなで最高な初夏、五月に、目がムズムズと痒くなり風邪でも無いのにどうやっても鼻水とくしゃみが止まらないなんとも言えない不快な状態が一か月続いた。その時はわからなかったけれど、それ以来毎年そのシーズンに同じ症状が現れにつれ、やっと「これは花粉症というやつでは」とピンと来た。
謎なのは、他の花粉症の皆さんと時季が二か月くらいズレていることだったけど、まあ杉ではない「何か」に反応するアレルギーのようだった。だから正直「花粉症」と呼んでいいのかわからない。英語言うところの「Seasonal Allergy(季節性アレルギー)」がぴったりな呼び方な気がする。気候が爽やかな初夏に最悪にひどくなり、気温が上がりきって夏になるとピタリと止まる。
憂鬱なのは、年々症状がひどくなり症状が続く期間も少しずつ少しずつ延びていったこと。目がやられるのは、ド近眼の私には日常生活で機能できなくなることに等しい。コンタクトレンズができず、眼鏡で過ごすとなると生産性が40%くらい下がる。眼鏡で視力が出せないくらい目が悪いから。眼鏡だと見えない。
学生の時はよかったけれど、働くようになってからはこのアレルギーの時季は地獄だった。鼻水やくしゃみは薬である程度止められるけれど、コンタクトレンズだけはその時季どうしても装着できなかった。目の炎症がひどすぎた。「かゆい」はとっくに通り越して「痛い」。目の周囲も腫れ上がり、人前に出るのも嫌だった。常に頭がぼんやりとし、気分も落ち込んだ。一年のうち何も手につかない1~2か月が毎年来るように。
とにかく18歳から徐々に徐々に人生を侵食してくる存在・・・それがアレルギー。
そんな私が渡米することになった。
「もしかしてアメリカに行ったら、植生も全然違うしアレルギーが無くなるのでは? 人生変わるかも!」
お薬天国アメリカ
もちろん私の人生にそんなハッピーエンドがあるわけがない。
むしろ、渡米後に強烈にアレルギーが悪化していった。しかし、その頃は英語もろくに話せず、病院に行くなんて何をどこから手をつけていいのか?状態だったから行けなかった。
アメリカには私とは理由は別だけど病院に行けない/行きたがらない人も多い。診療費がべらぼうに高いから。日本にいる時は、簡単に病院に行っていたけれど、アメリカに来てからは「いくらかかるんだろう」とまずお金が気になる。そういう人、多いと思う。そのせいか、予防や自力回復を目指すためのマーケットがすごい。サプリメントやら薬やら、日本では処方箋が必要なものがずらーっとその辺に売っている。アメリカ生活をやめて日本に引き上げることになったら、何を買って帰るか・・・と考えた時、究極、書籍とかメラトニンとか薬かなと思う。
話を花粉症に戻すと、渡米後、アレルギーで眼球の炎症がますますひどくなり落ち込む私に、配偶者がネットでいろいろ調べて目薬を買ってきた。前年までアメリカでも処方箋薬だった強い目薬で、ちょうど私が渡米した年にover-the-counter(市販薬)扱いになったらしい。ボシュロム社の「Alaway」というやつ。これがものすごく効いた。もうその日からAlawayのとりこ。Alaway最高。
最近では、Wal-martやTargetなどの全国チェーンのスーパーで同じ成分の自社版Alawayコピー品も安く売られるようになり、そちらも試したけど効き目は本家本元と同じでよかった。
最近かかった眼科医は、「AlawayよりZaditorのほうが強いはず」というので、Zaditorも試したけれど、私には効き目の違いが感じられず、Zaditorのほうがだいぶ高いのでZaditorはもう使っていない。
というわけで、渡米後数年はAlawayで辛い時季をだましだまししのいでいた。鼻水・涙・くしゃみを止めるのは日本から持って来た鼻炎薬。
しかし、日本の鼻炎薬はとにかく眠くなるし、徐々にアメリカのスーパーで勢ぞろいしている眠くならないアレルギー薬を服用するようになった。一通り試したが、恐ろしいことに効くのは最初だけでどれもだんだん効かなくなる。結局、一番ひどい時季は強烈に眠くなる一番強いやつを服用量の上限まで飲むようになってしまった。ただでさえ、アレルギーがある時は就寝時に目を突き刺すような痛みで眠れず睡眠不足なのに、そんなふらふらになる鼻炎薬にまで手を出して、アレルギーの時季はもやは廃人。鼻炎薬ジャンキー状態。人間として使い物にならない。
しかし、そんなお薬だって、渡米生活の全期間の五分の1くらいを占める妊娠期間中は飲めなかったわけだし、とにかくアメリカでのアレルギーは地獄だった。なんと昨年からは秋にもひどい症状が出るようになって目が開けられないくらいになった。
もう・・・これでは生きていけない・・・。
社会復帰をめざすべく仕事を探していても、「こんなにひどいアレルギーでは家庭から出て働くことなどできない」という結論に達してしまう。しかし、私はこれまでの人生で「花粉症を克服した」「アレルギーが治った」という人を見たことが無い。
このまま、アレルギーに人生を奪われていくだけなのか。
おおげさに聞こえるかもしれないけどそれくらい切実な状況・・・。
免疫療法のクリニックを近所に発見
英語で医療関係の情報を読むのが本当に苦手なのだけど、色々と最新情報を調べてみたところ、季節性のアレルギーにも免疫療法(Immunotherapy)があることがわかった。
免疫療法・・・ちらっと聞いたことはあった。アメリカにおけるアレルギーの横綱ピーナッツ・アレルギー、そのアレルギーに苦しむお子さんの親御さんから。ピーナッツ・アレルギーは本当に深刻で少量でも命に関わるケースも多い。で、少しでも危険なアレルギー反応を軽減するために「アレルギー反応を引き起こす原因物質を少しずつ注射して体を慣らす治療を娘がしているが、この間その注射で悪い反応が出てERに行った」とおっしゃっていたことを覚えている。そんな恐ろしい治療法をするなんで、ご両親もお子さんもキツイだろう。しかし、それがうまくいってアナフィキラシーショックに怯えずにすむ将来があるのならやる価値があるのかもしれないな・・・命がかかってるもんな・・・などと思ったものだ。
なので、そういった免疫療法は命に関わる深刻なアレルギーだけだと思っていた。私のアレルギーは切実な問題ではあるけれど、死にはしない。薬で症状を緩和するだけで根本的には改善の余地は無いのだろう・・・とあきらめの境地だったけれど、どうやら近所のアレルギー専門クリニックのホームページの「患者さんからの喜びの声、続々」の欄には、
「屋外でのアレルギーとペットアレルギーの両方に生涯苦しんできました!このクリニックの治療法で、もうアレルギーのトリガーになるものを恐れずに生きられるようになりました。」
と書いてある。ペットアレルギーだって死にはしないけど、なんらかの治療はあるということか・・・?
このクリニックに行ったところで今より悪くなることはないだろうし、アレルギーテストを受けて、敵の正体を正確に知るだけでも価値はあるかもしれない。失うものは何も無い。お金以外は・・・。
私には、アレルギー検査に関わる出費で痛い経験がある。
私は重度自閉症児を育てているのだけど、やつが2歳の頃、藁にもすがる思いでセラピストの手引きで今にして思えば怪しげなクリニックにかかり、
「自閉症児には腸に問題がある子が多い、食物の遅延アレルギー*1の検査をして徹底的な食物療法をすべきだ」
と言われて、血液をサンプルにした遅延アレルギー検査に約17万円とられたことがある。その検査をできるのはアメリカ国内に一か所しか無いし、保険も効かないそうで。障害のある子のためにどんなことでもする、そんな親の気持ちを完全に食い物にしている。もしかしたら悪意は無く、真剣に良いことをしていると思っているのかもしれないけれど、返ってきた結果を元に、
「お子さんは、こんなにたくさんの遅延アレルギー反応が出てるんですよ。見て、ほらこれらのすべての食品がダメです!!」
と食事療法をとうとうと語る医師にうなづきながら、私は黙って心の中で思った・・・。「先生、アレルギー反応が出ている食品はすべて前の日に食べたものです・・・テスト結果は前日の食事の影響を受けているだけです・・・それとも先生は私がテストの前日に子供の遅延アレルギーにドンピシャな食品を何品目も偶然食べさせたとおっしゃるんでしょうか・・・」
つまり、限りなくインチキくさいアレルギー検査に17万円払った経験があるのだ。今よりもっと貧乏だったのに。
今回行こうと思っているアレルギーのクリニックではちゃんと信用できる検査をしてくれるのだろうか。夫には、「あのインチキ検査ほどはとられないはずだけど、血液検査はたいていウン万円とられる。でもどうしてもアレルギーを良くしたいから検査を受けてみていいか」と事前に断りを入れ、病院を予約した。
おっと、今回は前置きで終わってしまった。次回に続く。
*1:アナフィキラシーのような即時の反応ではなく、体調を悪くする、つまり食べ物が体に合わない・・・というようなアレルギー