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ユタ州の砂漠で発見されたモノリスの続報! 芸術家ジョン・マクラッケンさんの作品か??

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『2001年宇宙の旅』DVDジャケットより

 ヘリコプターからビッグホーンシープの生息数を数えていたユタ州の野生動物管理局の職員たち。シープの雌雄まで数え分けなければならないため、ヘリはかなりの低空飛行を余儀なくされた。その時・・・、
「おい、あれはなんだ・・・?」
砂漠の渓谷に奇妙な何かが!! 

 日本語ニュースにもなっていますので、ご存知無い方はこちらをどうぞ。
CNN.co.jp : ユタの砂漠に「モノリス」出現 州当局のヘリが発見

 「モノリスって何」と言う方は、映画『2001年宇宙の旅』のオープニングをご覧下さい。猿だった人類の目の前に神のように突如出現した謎の物体が「モノリス」。人類が直線・直角など道具が無いと作れない「何か」の出現により、高度な知的生命体として歩みを始め、同時に暴力にも目覚め、空高く放り投げた人類初の「道具」(死骸の骨)が宇宙船に変わる・・・という映画史に残る象徴的な素晴らしいオープニングです。
youtu.be

 一体誰がなんのためにユタの砂漠にモノリスを建てたのか? 
 様々な憶測が飛び交っていますが、2020年11月28日付のNYタイムズに芸術家の故ジョン・マクラッケンさんの作品である可能性を検討する記事が出ていました。

ユタ州からの発表まとめ

 まずはこれまでの州からの発表で分かっていることをおさらい。

・三角柱
・10-12フィート(3~3.5メートル)の高さ
・場所は、徒歩でも車でも行くのが大変な場所(たどり着くまでに迷ったり怪我をしたりレスキューの必要が出てくる可能性があるため、州当局は正確な場所の公表を控えている)
・しかも地面は岩盤
・どれくらい深く埋まっているかはわからない
・材質はステンレス・スティールのようだ
・どのくらい前からあるのかも不明、1940年か1950以降のいつか
・作者を示唆するようなものは何も残されていない

公安局の警部補のコメント:

「誰かが時間をかけてコンクリートを切る道具か何かを使って、ちょうどオブジェの形状通りに深く掘って埋めた。変だよ。近くに道路はあるけれど、岩を切るための道具や3メートル近くになる金属をひっばってくるなんてことをあんな辺鄙なところで全部やるなんて、かなり興味深いことだ。」

“Somebody took the time to use some type of concrete-cutting tool or something to really dig down, almost in the exact shape of the object, and embed it really well.
It’s odd. There are roads close by, but to haul the materials to cut into the rock, and haul the metal, which is taller than 12 feet in sections — to do all that in that remote spot is definitely interesting.”

故ジョン・マクラッケンのアート・ディーラーが名乗りを上げる

 謎が謎を呼ぶ中、ジョン・マクラッケンさんという芸術家の作品を展示する画像のオーナーであるデイヴィッド・ズワーナー(ザ―ナーさんかな?David Zwirner)さんがモノリスは「正真正銘、マクラッケンの作品」と断言。
 ジョン・マクラッケンさんは、ミニマルな立体作品で知られる芸術家で、脳腫瘍で2011年4月に76歳で死去していらっしゃいます。ジョン・マクラッケンさん(John McCracken)
 確かに、ニューヨーク・タイムズ紙に載った写真を見るとそっくりな作品がありますが・・・
www.nytimes.com 

息子さんのコメント

 ジョン・マクラッケンさんの息子パトリック・マクラッケンさんが電話インタビューで語ったところによると、生前のお父様は以下のような方だったとか。

・大のSFファン
・地球外生命体やタイムトラベルを真剣に信じていた
・地球外生命体は、すでに長い間この星を訪れていて、しかもよくあるフィクションにあるような悪い目的ではなく、陰ながら人類の助けになるために来ていると考えていた
・彼らが自分の芸術作品を真似たものを地球に残していくことや、そんな作品を作ることに憧れていた
・「人里離れた場所に後になって見つかるような作品を作ってみたいもんだな」と2002年ごと夜空を見ながら話している時に言っていた

 というころで、今回見つかったモノリスは「父の芸術の理想と合っている、父ならやりそう」と息子さんはお父様の作品と思いたい感じのコメントをしています。
 真実はわかりませんが、ジョン・マクラッケンさん、なんか素敵な方ですね。お友達になりたかった。

ジョン・マクラッケンの作品ではないとする人たち

 もうジョン・マクラッケンさんの作品なんじゃないの、と思いたいところですが、彼をよく知るほかの方々は否定的。
 マクラッケンさんがカリフォルニアに住んでいた頃の友人でカリフォルニアのアートシーンで著名なEd Ruschaさん:
「彼の作品だとは思わない。人をひっかけるようなことをするなんて彼らしくない。砂漠にモノリス? (キューブリックの映画のせいで)世界中で知られているアイディアなんだから誰だって可能性はある。SFが好きな誰かが思いついて遊びでやったんだと思う。」
 マクラッケンさんの親友で彼の元アシスタントでもあったジェイムズ・ヘイワード(James Haywardさん)も上記意見に賛成。
「私の知る限り、これはただの壮大ないたずらだね。私が写真で見たオブジェは、かなり粗く作られている。私はできるだけ角を観察した。これはブレーキと呼ばわれる鉄を曲げる機械で作られている。その方法でやると、角がくっきり鋭利にならず、丸味を帯びるんだ。」
 マクラッケンさんは、手作業で根気強く職人のようにオブジェを作ることにこだわっていたそうで、写真のモノリスは彼の作品のそうした手法と異なり、彼以外の誰かの仕業だと言っています。
 しかし、前述のジョン・マクラッケンさん作を主張している画廊のオーナーは、ジョン・マクラッケンさんは作品制作の一部を協力者と共に行うこともあったと主張しており、そのケースだった場合はマクラッケンさんの特徴的な手法は作品に現れないわけで、作品に使われた手法から作者を割り出すことも難しいという状況になっています。

ネットの皆さんは

 州政府が位置の公表を控えているにも関わらず、ネット探偵たちは即座に場所を割り出し、現地に行く人が続出。もう現地はちょっとした観光地? ちなみに、Googleさんの衛星写真にばっちり写っているのは我が家でも確認できました。美しい影が砂漠の谷に落ちているのが見えます。写真で撮った時に映える素晴らしいロケーションを選んでいますよね。
 そして、過去の衛星写真から、モノリスが2016年からそこに出現していることを確認したネット民がいるという情報も。2016年というと、ジョン・マクラッケンさんの没後。このネット探偵たちによる情報が正確だとすると、マクラッケンさん作品説の線が消えますね。

まとめ

 ジョン・マクラッケンさん以外でも、「こういうミニマルな立体作品と言えば○○さん」という芸術家はたくさんおられますが、今のところめぼしい候補者は全員「私ではありません」。州当局が、作業に関わった方はだれでもいいから情報を、と呼びかけてもなしのつぶて。
 結局、作者の候補は狭まっているもののまだ断定には程遠い状況です。
 しかし、現地に行く人も多いし、近いうちにもっと推測に必要な情報が入るでしょう。
 モノリスがジョン・マクラッケンさんの作品だと利益がある人がそれを主張しているところに、ちょーっと金の匂いを感じて興ざめしてしまいますが、今回の一件で私もマクラッケンの名を検索し、作品をチェックしたので、知名度アップのチャンスを逃したくない気持ちもわからなくはないです。
 
 ちなみに、ビッグホーンシープの生息数のカウントは成功し、「羊たちは元気にやっている、たくさんいた」とのことです。あんまり誰も気にしていませんが。

他の参考記事:
Utah Monolith Is a Weird Surprise in the Desert - The New York Times