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Trailblazers (その道の開拓者) - メジャーリーグ初、女性だけで実況中継した試合を観てみた

 2021年7月20日の朝のニュース。

 「今夜は、メジャーリーグベースボールにとって歴史的な夜です!」

というアナウンサーの感慨深い声が聞こえてきて、何事かと思ったら、実況や解説に一切男性を使わず、全員女性で試合を放送するとのこと。百年を越えるリーグの歴史で初めてだそうです。
 

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FoxスポーツのTwitterより

 Traiblazers(先駆者)として歴史に名を刻むことになったのが画像の女性5名。

試合前・試合後の番組の司会者(Pre-game and post-game show host)2名
実況(play-by-play announcer)1名
実況と組む解説(Analysist)1名
フィールド・リポーター (On-field reporter) 1名

 野球の試合が上記のような構成で実況されていることを初めて知った。

 彼女たちが実況した試合は、ボルチモア・オリオールズ対タンパベイ・レイズで、フロリダのタンパから生中継。どっちのチームも全然興味がないんだけど、よく考えてみたら確かに女が野球実況するのを日本でもアメリカでも聞いたことがない。そのことに疑問を持ったことすら無かった。

 ちょっと興味が湧き観てみようかなと思ったら、「歴史的な快挙」みたいに騒がれている割にはテレビ放映は無く、YouTubeでライブストリーミングされるのみ。
 しかし、それがすごくよかった。
 今回の試合が中継されたのは、YoutubeのMLBチャンネルの中の番組「MLB Game of the Week」。毎週1試合、この番組でMLBが選んだ試合が生中継され、全世界どこからでもタダで視聴可能ということを今回初めて知った。
 せっかく女性が歴史を刻むのにテレビでやらないの?という疑問の声がネットではちらほら観られたけれど、見方を変えれば歴史的な試合だからこそ全世界の人が1週間たくさん観られるような場所で放映してくれたということかもしれない。  
 ストリーミング実況も双方向な感じで、試合中の視聴者チャットに書きこまれた内容が即座に実況に読まれたり、試合中もYoutubeのアンケート機能でどんどんアンケートがとられてすぐ結果発表されたり。

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「2021年の終わりに起こっていそうなのは?」アンケートで見事、大谷60本塁打がトップ

 やっぱり時代はネットなんだな。
 試合内容も番組全体も楽しく、思わず最初から最後まで観てしまった。
 上の画像のアンケート「2021年に一番起こりそうなことは?」のところで、みんな大好き大谷選手の話も出ていましたよ。
解説「皆がオータニの素晴らしさに注目していて嬉しい」、
実況「オータニはlikable(性格がいい、感じがいい)な選手でもある」、みたいな感じ。野球ファンには本当に人気者ね、オータニさん。

 この実況中継のスポンサーが「YouTube Shorts」だったおかげで、それがTikTokのYoutube版みたいなサービスであることも初めて知ったし。(最初「YouTubeの短パン?」とクエスチョン・マークで頭がいっぱいになったけれど)

 二十代でステージ3の癌と闘病し、今シーズンに奇跡のカムバックを果たしたトレイ・マンシーニ選手の元気なプレイも観られた。先日のホームラン・ダービーにも特別推薦で出場していたので、日本でも彼の勇気の出るストーリーは紹介されたでしょうか?

 そうそう、肝心の女性実況は、なんか試合が始まったら女性ということを忘れてしまう感じ。いつもの野球実況の声が男から女になっただけに感じた。彼女たちは、マイナーリーグの試合やラジオ実況で今まで長い間経験を積んできた人たちで、野球実況や解説のプロなわけで、今回やっとメジャーから声がかかってメジャーの試合を担当することになっただけ。光栄だけど、数ある試合のひとつ、数ある仕事の一つに過ぎない、と皆さんおっしゃっていました。
 私に深い野球の知識や英語力が無いせいかもしれないけれど、実況も解説もインタビューも、今まで男性がやってきたのと比べてなんら劣るところは無く、逆になんで今まで女にやらせてみようという試みが無かったのかなと思ったくらい。
 日本のプロ野球中継の、あの後手後手の解説者が懐かしくなるくらい本格的でした。「最近当たってませんからね、単打狙いですかね、ここは・・・」と言ってるそばからホームランが出て、「いや~、そろそろ出るなと思ってたんですよ、私は!」みたいな・・・。日本のプロ野球中継、元選手のそういうグダグダ解説にツッコミを入れるのも楽しかった。でも、今回の女性実況ではそういう雰囲気は無かったな。きっちりしっかりやってました。「初の○○」は厳しい目で見られるからね。後に続く人のために失敗はできない、というプレッシャーもあったでしょう。

 私は、実況のメラニー・ニューマンさんがメジャーリーグで初めて女性としてホームランを実況できたら嬉しいだろうな、男性アナウンサーはよくホームラン出ると絶叫するけどどうやるのかな、と試合中にホームランが出るのを楽しみに観てました。そうしたら、登板を終えたレイズの先発投手に実況がインタビューしている真っ最中にレイズの選手がホームランを打ち、
「今年のシーズンでうちのチームで一番ブレイクしたのは~・・・あっ、ランディがセンターに運んだ! 大きい!! ホーームラーン!!」
と、そのインタビューしていた選手に実況されてしまった。よりによってそこだけ男性の声で実況・・・なぜそうなる。みんな笑ってたけど。

「私たちがこういう”初”を全部まだやってるのはクレイジー。私のキャリアはほとんどが、女性初のなんとかこんとかって感じがする。でも、私たちが最後じゃないっていうのはいいこと。」
(実況担当メラニー・ニューマンさんの言葉)

"It's crazy that we're still doing all these firsts. I feel like that's been most of my career has been first female this, first female that. But the good thing about it is we're not the last."

 
 NFLやNBAではもう既に女性実況チームによる放映はすでに行われているそう。MLBもついにその流れに乗って、今回初めてガールズ・オンリーの実況中継になり、すごくわくわくしたけれど、全員男性なのも全員女性なのも不自然と言えば不自然なので、ミックスするのが一番かも。男性の実況陣も、狭い実況ブースでおっさんどうしでひしめき合っているより、たまに女性と仕事するのも楽しそうじゃないですか?

 しかし、残念なことに、今回の試み、賛否両論のようで・・・。

 もちろん、
「こういうのいいね!毎週やっちゃえ!」
「テレビでも流れるといいね!」
「すごくいい実況だったよ、おめでとう!レディース」

という声もあるんだけど、否定的な声が多くて結構驚きました。

「うるさくてすぐにミュートした」
「男のスポーツで女の声が流れるのは我慢ならない」
「そのスポーツをプレイしていないやつに実況や解説されたくない*1
「どうでもいい」
「多様性とか言って全員白人だろ」
「野球の試合で女の声が流れるなんて、男が一番嫌がることだ」

等々。うーーーーん、うーーーーん・・・。

 男は女が好きなんじゃないのぉおおおおおお!?
 
「こんなに野球に詳しい女とビール飲みたいぜ、楽しそうだよな。俺は解説の○○ちゃんのファン」

みたいな流れにはならないのーーーー!? 女子アナにでれでれするみたいな流れにはならないのーーー!? なんでなんで!?

 結論。

 男は女を見るのは好き。でも、聴くのは嫌い。

 男性の皆さん、これで合っているでしょうか? 男も結構複雑なのね。

*1:有名な男性解説者や実況アナの中にも野球のプレイ経験がない人がいる、とつっこまれていましたが