アメリカの給食のおばさんになってしまった・・・ダメだ完全に迷走している
ここのところ、いろいろあり過ぎて何をどこから書いていいのかわからない。ネタがある時に限って書く時間が無い。気力も無い。
記事タイトルの通り、私はここ一か月、アメリカの公立校で給食のおばさんをやっています。なぜどうしてこうなったんだ? 自分でもいまだに呆然。
最初は、障害児クラスの補助要員の予定だったのに、人事に呼び出されて、
「給食部の人員が足りません。やってくれますか?」
と切り出された。
「いやです!それは私の希望している仕事ではありません!」
とか言えないお人好しの私・・・。
答えが決められない時の必殺技、質問攻めで時間を稼いだんだけど・・・。
「あの・・・あの・・・私、アメリカの給食のこと全然知らないんです。日本はまったく違うシステムだし、アメリカの学校のカフェテリアに入ったことすら無いし、食べたこともないし・・・あの・・・何を・・・何をやるんですか」
「ええと・・・そんなに人が足りないのは、なぜなんですか? みんなやめちゃったんですか? コロナのせい? 仕事を辞めたり転職したりする人が増えているってニュースで観ましたけど・・・」
「私、週に何回か、まさにランチの時間のまっただなかに子供を学校から連れ出してセラピーに送らないといけないんです。重い障害のある子で、既に学校側ともクリニック側とも話がついていて、送迎は責任を持ってやらないといけないんです。私は、給食部の求めるスケジュールにあっていないと思うんですが・・・」
完全におろおろしている私に、おばちゃん世代の女性二人が親切にひとつひとつ答えてくれる。
給食無償化政策のせいで、家からランチを持ってくる子が減り、給食を食べる子が増えた事。
昨年までオンライン授業を選択していた子も対面授業に戻って来て、一気に給食部がさばく数が増えた事。
市に転入して来る家族が増え、生徒数がどんどん増えていること。
たとえ毎日じゃなくても、働ける日に仕事してくれるだけでも助かること。
そして、私の目を見ずに申し訳なさそうに言う。
「食器を洗ったり、テーブルを拭いたり、キャッシュレジスターを担当したり・・・そういう仕事なんです。やってくれますか? いやですか?」
あなたがやりたい仕事じゃないことはわかっているのよ、こんな仕事を頼んでごめんなさいね、そんな空気がありありと・・・。
まったく冷静に考えられなかった。
正直、
「やっぱり私はそういう一番簡単(?)な仕事に回されちゃうのか・・・移民なのね・・・日本での学歴や職歴なんてどうでもいいのね・・・」
というような、おこがましい落胆もあったし。
でも、なんとなく本能が強烈に、
「やれ!引き受けろ!今は与えられた仕事を頑張るべきだ」
と後押ししているように感じ、結局、にっこり最高の笑顔で、
「やってみます!やらせてください!」
と答えてしまいました。
で、あれよあれよと言う間に怒涛のように市の複数の小学校や中学校の給食室に放り込まれ、毎日毎日給食のおばさんしている。
しかし、給食のおばさんと言っても、日本の給食のおばさんとは絶対かなり違う。日本の給食のおばさんのように「調理」という高度な仕事は一切無い。
来る日も来る日も、給食のトレイをひたすら食洗器にかけ、空いた時間は、ひたすら鉄板に冷凍食品を並べている。 おいおい、アメリカの給食部、君たち、冷凍食品をオーブンであっためて出しているだけだね? 料理なんてしてないじゃないかー! さすがアメリカ。
しかし、頑張ってみようと自分で決めたことなのに、オムレツを380枚とか鉄板にひたすら黙々と並べている時など、やはりあまりの暇さと単調さに辛くなることがある。
私は一体こんなところでなにをやっているのか?
アメリカに何しに来たんだっけ?
これをずーっと続けるのか?
残りの一生、こういう仕事をしていくのか?
私はスカリーなのに!FBIの捜査官なのに!(←違う)
何か自分の中の何か、創造的な部分とか楽しい部分とかが擦り切れていくようにも感じる。あのスティーヴン・キング先生ですら、生活のためにフルタイムで高校の国語教師を始めた時、初めて小説が書けなくなった、と自伝で書いていたっけ。その気持ちがなんとなくわかる気もする。
まあ、ずーっとアメリカで主婦していて、10年以上働いていなかったんだから、消耗して当たり前なのかも。そのうち、またいろんな意欲が戻ってくるのかな。
そして大げさな話じゃなく、私は日本を背負っていると感じる。いや、正確に言うと「ここらへんの人たちの日本への評価」を背負っている、かな。
だってまじで、私、「珍獣」「珍しい種の昆虫」扱いなんですよ! もう10年以上アメリカに暮らしているのに、彼らにとっては「日本人」。私を形容する言葉は、「女性」でも「○○ちゃんのお母さん」でも「新入りの給食のおねえさん」でもなく「日本人」です!
日本人が少ない地域で、しかも給食部で仕事した初の日本人なわけで、とにかく珍しがられます。珍獣と何を話していいのかわからないんでしょうか、頓珍漢な質問ばかり聞かれます。
おそらく私より10歳以上若いと思われる男が上司なのですが、そいつの面接官のような質問攻めとちっとも噛み合わずはずまない会話が辛い。()内は私の心の声です。
上司「○○(←私の名前ね。やたら名前を呼ばれる)、ここで暮らしていて幸せ? 日本のほうがいい?」
私「(そんなもん正直に言えるわけないじゃない、余計なお世話だよ)とっても幸せです!」
上司「そう・・・(シーン)」
上司「○○、料理はするの? 何を食べているの?寿司は食べるの?肉は食べるの?魚は食べるの?」
私「(そんなん聞いてどうすんだよ、普通の人間なんだからあんたたちとおなじようなもん食べてるよ)イエス、イエス、イエス、イエス、イエス、ベジタリアンとかではありませんね」
上司「そうか・・・(シーン)」
上司「うちの5歳と2歳はラーメン・ヌードルが好きなんだ」
私「(あんまり幼児に食べさせないほうがいいんじゃないの)そうですか~」
上司「(シーン)」
上司「○○、レストランは行く?日本食のレストラン行く?この間△△△に行ったんだけど、あなたも行ったりする?」
私「(もっとおいしい日本食を私が調理できるし、そんなナンチャッテ日本食レストラン行くわけないじゃない)あまり知りません。多分オーナーは日本人じゃなくて韓国人とか中国人ですね!」
上司「・・・オーケー。(シーン)」
ほかにも、
「日本とアメリカと何が一番違う?」
「ハズバンドは何をしている人?どこでどんな仕事?」
「トーフって食べる?どうやって料理するの?」
「日本にもホームレスはいる?」
「日本って生活の質はここと同じくらい?あんまり変わらない?」
・・・エンドレス質問攻めです。
ねえねえ、どうしてオータニとかオーサカのことは聞いてくれないの? やっぱり彼らを知っている人なんて都会限定なのね。この州で生まれて一生地元で暮らす人ばっかりだからなあ。住んでいる州が「国」みたいな感じで、外のことにあまり関心ないと言うか・・・。
なんか・・・大変です・・・。
「私は余裕が無いの、話しかけないで」というオーラを発して黙々と仕事をしているうちにあまり話しかけられなくなったんだけど、でももしかしたらこのままだと、
「日本人はつまらない奴らだ。仕事ばかりしている。一緒に働いていてまったく楽しくない。」
とか思われちゃうかもしれない!!! 私=日本人、みたいにほんとに思ってるっぽいから。
「私は日本人の中でも変人です、普通の日本人はこんなんじゃないです」
とユニフォームにでかでかと書きたいところだけど、そういうわけにもいかないし。
で、今は、毎日、
「歌って踊れて楽しくお話してくれる、一緒にお仕事していて楽しい給食部一の美しいお姉さん」
を目指して日々精進している。
ほんとこんなに働ける時間が少ないのに、その中で働かせてくれるだけラッキーだと思うし、まだ肉体労働(?)ができることに感謝しなくちゃいけないし、なんか仕事始めてから健康になった気もするし、体力もついた気もするし、本当に良い事だけ見て頑張ろうと思っています。
でもでも、このままじゃ絶対いけないような気もするし。ほんと複雑な心境・・・。スカリーよ、お前は一体どこへ行く??