WRITE, DREAM, LIVE

アメリカ在住の日本人がいろいろ書き散らす

Two-way thing (二刀流)

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公園で見かけたしょぼい少年野球の試合 観ていてすごく楽しかった

「二刀流をやるためにここに来た。二刀流ができるのを証明してみせるっていうのが大きなモチベーションになっている。」

“I came here to do the two-way thing. That’s a big motivation for me, to try to prove to everyone I’m capable of that.”

(大谷翔平、NYタイムズ紙の記事より)

 もう毎日毎日、大谷大谷大谷ってもう聞き飽きた!という日本の皆様。はい、また大谷サンの話題でーす。

  日本では、大谷選手がホームランを打つと速報になるくらいの扱いと聞きます。しかし、アメリカ国内では、チームの地元とか熱心な野球ファン以外は「それ誰?」状態です。大谷サンが人気無いんじゃなくて、野球がいまいち人気が無い。野球やってる子供も少ない。まあ、私の住んでいる街は、MLBのチームの地元じゃないからっていうのもあると思うけれど。

アメフト>>>>>>バスケ>>>>>>>>>>>>>>野球

 地域性もあると思うけど、体感的には上記のような感じ。
 メディアの広告に使われるのも、NFLとNBAの選手ばかり。野球はそれらに比べて明らかに扱いが小さい。NFLやNBAを熱心にフォローしていない人の間でも名前と顔が一致するフットボール選手やバスケの選手はいると思うけれど、野球選手となるとそこまで知名度高い人はほとんどいないんじゃないかな。

 以前、インド出身のアメリカ人に、こう言われたことがあります。

「日本に出張に行ったことがあるんだ。びっくりしたよ。朝、駅に向かう男性がみんな同じような恰好をしていて、そしてみんな野球の新聞を持っていたんだ!!」

 日本人会社員がみんなスーツを着ていることに驚いているのか? それとも、スポーツ新聞を持っている男性がいっぱいいることに驚愕しているのか? 
どちらもまったく驚きではない私にはわからず、きいてみたところ、両方にびっくりしたけど日本で野球人気がすごいということが特に意外だった様子。

 野球はアメリカから日本に行ったものだと思うんだけど、日本でのほうがアメリカよりずーーーーーーーっと人気になってしまった。アメリカの野球人気ははっきり言って下降気味でなんとかしないと!っていうレベル。

 そこに来て、大谷選手の登場です。

 正直に言う。大谷選手がアメリカ人で(そしてできれば白人で)アメリカ野球界生え抜きの選手だったら、多分MLBの人気復活の救世主になれたと思う。

 でも、日本が生んで日本が作ったスーパースターだから、アメリカ野球界としてはちょっとやっぱり悔しいんだよね。時代が違い過ぎて比較する要素がほとんど無いのに、やたらベーブ・ルース出してきたり。偉人のベーブしかできなかったことを日本から来た奴にやられたくない、もやもやもや・・・なんでしょう。

 アメリカ人の心が狭いと思ってはいけません。想像してみましょう。例えば20年後くらいに大谷選手が引退して国民的レジェンドとなった頃・・・どこの国だかわかんないところから、日本に突然すごい外国人プロ野球選手が来て二刀流でガンガン活躍し始めて、大谷選手の記録を軽く塗り替えて行ったら・・・リアルタイムで大谷選手を応援していた日本人たちは、賞賛しつつもなんとなく寂しい気持ちにもなるかも? 相撲で、日本人力士がとうていなしえないような強さを見せて前人未到の活躍をする外国人が表れたら、ちょっと複雑な心境になったりする人もいるかも?
 
 でもアメリカのメディアやファンは、そういう気持ちをそれほど表に出すことなく、うまく大谷選手の超人的な活躍を受け入れているように見えます。

 NYタイムズ紙が以下の記事で大谷選手のいわゆる「二刀流」の是非を検討しているのを読みました。6月29日付、ちょうど、タイムズの地元チームであるヤンキースが3連戦でエンジェルズと対決するタイミングだからこういう記事が載ったんだと思います。
 日本人にとっては何をいまさらな議論なわけですが、読者コメントも含めて面白かったです。

Is There Such a Thing as Too Much Shohei Ohtani? - The New York Times

 記事では、今シーズンの大谷選手の投打両方の好調をざっと紹介。そして殿堂入りしたピッチャー、ジョン・スモルツ氏が「オータニは誰もが応援している選手だ」としつつも、「でも現実的には、両方の素晴らしい才能をつぶすことなくこんなことをいつまで続けられるだろうか」と二刀流に懐疑的な見解を述べています。投手にしぼれば、今季素晴らしい防御率で投げているジェイコブ・デグロム級の投手になれるとおっしゃってますが・・・。

 この記事を書いたNYタイムズの記者は、日ハム時代の二刀流の実績や登板間隔なども参考にしつつ、「チームがちゃんと注意深くやるんであれば、うまくいくんじゃないかな」みたいな感じで二刀流に好意的な感じで締めくくっています。

 読者の皆さんのコメントをいくつか訳しますね。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

  • 私は71歳、生涯の野球ファンだ。ただの試合なんだよ、最近は大金が動くものになり過ぎているけどね。しかしまあそれでも、ただのゲームなんだ。彼は見るからにそのゲームを愛している。しかもうまいと来たもんだ。好きなようにプレイさせてやれよ。(テッド、ニューヨーク州の田舎)
  • オータニをオータニでいさせてやれ。オータニは試合をすごく楽しくしてくれている。 二人の日本人選手を思い出すな。すごく個性的でちょっと変わった食事法とか練習方法とかをしていた二人、イチローとレッドソックスのDice-Kだよ。一人は満場一致で殿堂入り、もう一人はワールドシリーズとったね。二人とも並外れたキャリアを並外れた長さで楽しんだ。賭けるよ、オータニもそうなるって。(Gautam, コンコルド、マサチューセッツ州)
  • 打者を諦めろだって? ジョン・スモルツ、本当か? ヤツは二刀流やりながら、OPSでリーグ3位、ホームランでリーグのトップなんだけど。あいつが打撃だけやってそのためにちゃんと休養をとったとしたらどうなるだろう? 彼の打撃はほぼ間違いなくピッチングよりすごいよ。今季はかなりの調整もしたし。仮に彼が投手だけやって5-WAR*1投手から9-WAR投手(デグロムのレベル)になったとする。対して、5-WARのままで投手やって今の彼のペース(現在6.8 WAR)で打ったとする。そうすると、彼は二刀流選手としてのほうが依然として価値が高いということになる。デグロムは、だいたい 8.5 WARのペースで投げている。投手だけやって10 WARを超えるのは本当に本当に大変なんだ。現代では片手で数えられるくらいの投手しか成し遂げたことが無い。オータニは、今季は(投手としてのWAR、打者としてのWARを合計すると)約11.8 WARのペースでやってるんだぜ! 最後まで頑張れるかな?(ジョニー・グレイ、オレゴン)
  • ヤンキース・ファンです。3連戦の最初の2戦を観ました。二試合で3ホームラン打たれちゃった。ポール・オニールも言ってたけど、彼を観るのが待ち遠しかった。今はもうたくさんって感じだけど。でも、真面目な話、すごいし、わくわくする選手だよね。(Lily tc、ニューヨークのダウンタウン)
  • よく分かってない「専門家」がオータニに投手にだけ専念しろというのは本当におかしなことだよ。このスーパースターに、そのままでいさせてやれ。彼は新鮮な息吹だ。特に彼の謙虚さと礼儀正しさ。俺を見てくれって感じで虚栄心が強いほかの野球選手のやり過ぎな祝い方とかと比べるとね。(ソクラテス、ニュージャージー州)
  • 野球にはオータニみたいな選手にファンの興味を再燃してもらうことが必要だ。正直言って、全部役割分担されているし、投手優位だし、野球の試合はつまらなくなっている。(zarathustra、リッチモンド)
  • オータニは、まさに野球が今こそ必要としているものだ。「どっちか選べ」派は聞き苦しいよ。彼が優れていることが不安なんだろうか? 野球っていうのは誰も見たことがない何かを与え続けるスポーツなんだよ。ショーヘイ・オータニの時代は今なんだ。(Slann、カリフォルニア)
  • オータニは一生に一度出会えるどうかというくらいのスター。彼自身がどう感じているかという以上に、彼のパフォーマンスを一番よくするやり方を毎日そしてシーズン全体に至るまで分かるやつなんているのか。最近の選手は全てのボールを最速で投げて、全部のバッターがホームラン狙ってスイングしなけりゃいけない。そういうレベルのパフォーマンスのために何億って金をもらってるのに、シーズンを怪我で終わりがちってのは矛盾だ。(MEM、ロサンジェルス)
  • 役割分担の時代、金やビジネスのせいで要求が大きい時代に、こんな投手・打者の二刀流を観るなんて考えたこともなかったな。ベーブ・ルースと比較するところは少ないよ。アメリカ人じゃないやつがそれをやっているっていうのがちょっと皮肉だよね。それでよかったのかもしれない。(Wordsworth from Wadsworth、New Wye, アパラチア地方)
  • でもエンジェルズは二流チームのままだけどね。(パトリック、ソノマ)
  • 最近、球界が選手に課している馬鹿げた限界にはもう飽き飽きだよ。この間、アーロン・ループがメッツのために3回投げて、実況アナウンサーは彼がなんかすごいこと成し遂げたみたいな反応だった。一番いい時期にあるプロのピッチャーが3回投げるのが、そんなすごいことか?  オータニが5日おきに投げてほかの6日間DHやるのを制限しろなんて、クリティカル・シンキングに欠けている。投手に専念したら、得点生み出しているのが無くなっちゃうけどそれはどうするの? 最近の野球は考え過ぎだよ、馬鹿げている。(TO、ニュー・オーリンズ)
                                                                                  • -

 まあ、こんな感じで、圧倒的に「二刀流やらせろ」、「ごちゃごちゃ言うな」、「最近つまんなくなった野球が面白くなるんだし、いいじゃないか」という感じで応援されています。

 しかし、しかしです。

 上記は・・・たったの21コメントからの抜粋なんですよ。

 こんまりさんがあまり面白そうにも見えない新刊本を出した時の「こんまりのパンデミックでもときめき☆日記」みたいな記事ですら65コメント(ほとんどアンチとか批判ばかりだったけれど)、お騒がせ大坂なおみさんの出たばかりの「ナオミがメディアに戻って来た!」記事も144コメント(こちらはアンチは少ない)・・・。「東京オリンピック実行委員長、性差別発言で辞任」という記事すら43コメント集めている!! 

 オータニさん・・・森喜朗さんにも負けてるよ・・・。

 というか、大谷選手がすごくないわけじゃない。やっぱ野球人気が無さすぎる。多分、その辺の人に「オータニは投手と打者の二刀流ですごいんだ」と言っても、「エッ、野球ってもともと守って打つのを両方やるもんじゃないの?」みたいな反応が来そう・・・。

 野球界よ! もっと頑張れ!! 

 野球人気が復活しないと、オータニさん、全国区になれません・・・。
 MLBは、オータニさんが身を削って二刀流という危険な賭けに出てんだから、どっちかにしぼれとか言ってないで、もう全員二刀流とか三刀流やらせろ!! 打者全員かならず1イニング投げろ!! 役割分担やめて、毎日守備のポジションもローテーション!! もしくは、くじびきでポジションと打順決める。外野はボールが飛んで来ない時は、歌って踊る!!

 オータニさんも打って投げるだけじゃなくて、記者会見拒否とかうっかり差別発言とかして世界的に炎上してみる。ベーブ・ルースを超えてみせますと宣言し、飲んだくれて葉巻吸って不倫しながらばんばんホームランを打つ(ベーブはそれらの素行の悪さで有名)。ここまでやったら、知名度でロブロンとかトム・ブレイディに並ぶことができるかもしれない。

 Make American Baseball Great Again!!

*1:その選手のチーム勝利への貢献語を示す指標で数値が大きければ大きいほど貢献しているということだそうです

”OK, Boomer!" (「はいはい、おじさん」)

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写真は本文とは全く関係ありません。でも、鏡みたいできれいですよね。

 Boomer(ブーマー)とは、ベビー・ブーマー、つまり1946年~1964年生まれ、2021年この記事を書いている時点で、57歳~75歳の人のこと。
 
 「OK, Boomer!」

 これは、アメリカで若い世代が、歳をとって時代に合わないことを言ったりしたりしているおじさんおばさんたちをバカにしてあきれ顔で言う言葉。

「昔はテレビすら一日30分までとか言われていたんだぞ! 今の子供たちのテクノロジーへの依存は」
「OK, Boomer!」

「その髪型は、ナウなヤングにバカうけでトレンディなのか?」
「OK, Boomer!」

「最近のあの・・・なんだっけ、ゲイとかトランスジェンダーとかああいうわけのわからないのはなんで多いんだ?」
「OK, Boomer!」

 このフレーズ、子供が親に言い返したりとか、ネットで世代間ギャップをバカにするミームにくっつけたり、Tシャツやグッズまで出たり、なんかはやっちゃってる。時代遅れのイタイ年寄りを「ハイハイ、わかったわかった」とフンと鼻で笑う必殺フレーズ・・・多分、言われた方は大半が「?」なんだろうけど。

 ブーマーは経済の繁栄を享受して地球を汚しまくって若い世代に後始末をさせている・・・と感じる空気はアメリカの若い世代にももちろんあって、日本で若い世代が「なんだか貧乏くじ引いた・・・?」と逃げ切り世代を苦々しく思うのと似ている。

 まあ、若者が年寄りをバカにするのはいつの時代にもあって、今のティーンネイジャー(ジェネレーションZ、Z世代と呼ばれている)だって、50年後くらいには、「OK, Zoomer!」って言われるんだろうけど。

 で、そんな「OK, Boomer」なノリでふざけているFacebookのとあるグループが最近ちょっと話題になった。
 グループの名前は、「A car club where everyone acts like boomers」(ブーマーのようにふるまう車好きのクラブ、みたいな感じ?)。 20代を中心とする車好きのメンバーが、わざとブーマーっぽいポストで車に関する話題を語ろう、というグループで、グループ創始者によると「完全におふざけ、ジョーク、荒らし、ひまつぶしのグループ」。

 彼らによると、ブーマーたちはテクノロジーを使いこなすスキルに欠けるので、ブーマーのFacebookポストはなんかヘンらしい。わかる気がする。

・キャップス・ロックを触ってしまうのか、やたら大文字が多い。
・つづりのミスが多い。
・変なところにスペースが入ったり、「.」が「,」になっていたり。
・やたら奥さんを下げたり悪口を書いたり
・中古品売買のページに変なものを売っている。しかも商品にあんまり関係無い自撮りとか家族の写真とかつけたりして。

 上記のような感じがBoomerっぽさらしい。それをいじって面白がっている。グループの概要説明文のところがそもそもわざと
「thank u f or your sevis
keep posts CARR RELATED!!」
みたいに書いてある。バカにしてる(sevis=service, CARR=car)。おじさんおばさんたちのコンピューター・リテラシーの低さを真似しながら、好きな車のことを語ったり、ブーマーたちが掲載した中古品売買のポストに変なコメントつけたり・・・そんなくだらないことをよってたかってやっている。
 
 そんなグループが、Facebookの売ります買います欄にあったひとつの出品広告に目を留めた。
「中古のエア・コンプレッサー売ります」
という広告なのに、なぜかでかでかと出品者の顔写真が・・・プッ、これはいじられるパターン・・・と思いきや、このポストにはバックストーリーがあった。

 エア・コンプレッサーを出品したのはゲイリー・ライダーさんというブーマー。
 溶接工だったライダーさんは、12年前の仕事での事故で右半身に大けがを負い、それ以来障碍者の身。なんとか杖をついて歩けるものの、長年の溶接の仕事を通じて化学物質を吸い込みすぎたことも相まって、痛み止めや体調回復のために処方された薬はまさにカクテル状態ですごい数に上っていた。結果、肝臓を壊し、医師からは生きるためには肝臓の移植しかないと告げられる。でもそれには四万ドル(日本円で約400万円)が要る・・・。
 
 クッキーを売ったりヤードセールをしたり、家族がファンドレイジングで集められたのはたったの20万円。娘さんがGofundMeで寄付を募ったものの、二か月で集まったのはたったの2万円。ゲイリーさんは、売れるものはなんでも売った。ブーマーいじりの若者たちの目に留まったエア・コンプレッサーもそのひとつだった。ゲイリーさん曰く、

「私はこれ以上ないくらい田舎の労働者なんだ。古い小さな炭鉱の街に住んでいる。家も150万円の価値しかない。その家だってなんだって売るつもりだった。」

 そんな背景を知ったFacebookのおふざけグループの若者たちの反応は・・・

「OK, Boomer!



手伝うよ」

 そしてこんなポストが飛び交った。

「こいつが肝臓と新しいエア・コンプレッサーもらえるように助けてやろう。1ドルでも10ドルでもあげようよ。俺らの人数ならいけるんじゃね」

 結果、グループのメンバーたちはゲイリーさんのGoFundmeのサイトに殺到し、目標金額にはあっという間に達成した。
 ゲイリーさんのGoFundmeのページのコメント欄は、ブーマーいじりの若者たちによる大文字と綴り間違いだらけのブーマー風の励ましメッセージで溢れている。
 日本語でやるとすると・・・

「愚妻がこういった寄付をよく思わないため。小生。山口桃恵さんのブロマイドを売却し寄付金としました. 全快をいのる;;」
「寄付をすませましたすがすがしい気持ちで五木ひろしさんのシーデーをきいております」

みたいな・・・? うーん、意外と難しい・・・?

 ゲイリーさんは、説明されるまでそのノリすらわからなかった。

「ちょっとふざけたりしているのもあるけど、何も悪いことじゃない。そこにたくさんの愛があるのを感じるよ」

あのエア・コンプレッサーはどうなったかというと・・・?

「まだ持っている。手放すつもりもない。世界一素晴らしいエア・コンプレッサーだよ。」

参考記事:
Boomer Trying To Buy New Liver Gets Donation From FB Joke Group
Facebook Group Helps Man Raise Enough Money For Liver Transplant : NPR
他、多数 

Existential Risk (人類滅亡の危機)

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この水、飲んでもいいの?

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飲んじゃえ― 暑くて喉が渇くんだもん

 人生初体験レベルの猛暑が続いている。

 冬に人生初体験レベルの寒さを体験したと思ったら夏はこれ。そうなるんじゃないかなという予想が的中した。毎年、育てるのを楽しみにしている蝶もメキシコから北上して来ないし、蜂も少ないし(これは嬉しいけど)、去年川遊びをした小川は干上がっているし、何か、見えない大きな何かが起こっているのを感じる。

 もうアメリカでは、気候変動がはっきりと誰にも体感できるレベルになってきている。気候変動は陰謀論だと言う人もいるけれど、気候が以前と違うといのは皆が認めるところだと思う。

 先日、我が家の子供が家の外で友人数人とべちゃくちゃぺちゃくちゃギャーッハッハッハとなにやらうるさく1時間くらいくっちゃべっていた時のこと。
「何をあんなに盛り上がっていたのよ?」
と後で聞いたところ、ティーンネイジャーらしく
「覚えていない。色々。」
と冷たい答え。しかし、その後、やつが付け加えたのが以下。

「火星にものすごいお金かけてあんなロケット飛ばしたりするんだったら、地球をなんとかしたほういいんじゃないの、とか話してた。」

思わずまじまじと顔を見てしまった。

「あの・・・あの・・・本当にそうだけど、そうなんだけど、飛ばしてる人たちはもしかしたら地球が本格的にダメになった場合に備えてプランBというか・・・うー・・・人類のためになんとかしようとしているのかもしれないね? えーと知的探求心の追及も人類貢献の一環というか・・・」

「そんなの、こっちがダメになったからあっちに行こうとかやってたら、行った先だってどうせダメにするだけでしょ」

ヤツは冷たく言い捨てて自室へと去って行った。ちなみにヤツは日本では中学生である。

 これが現代の子供たちの感覚なのかなと思った。

 先日、アメリカの若者のメンタルヘルスが非常事態ということを書いたけれど、彼らが心を病むその理由の一つに、「Existential Riskへの恐怖と不安」が入っていた。

 Existential Risk、つまり「人類滅亡の危機」。
 気候変動やパンデミックで、人間はもうダメなんじゃないかという暗い未来がリアルに子供たちの心にのしかかっているらしい。これはもうノストラダムスの大予言とかとレベルが違う。

 グレタ・トゥーンベリちゃんが怒りまくっているのを揶揄する大人もいるけれど、未来がある子供たちには大人にはわからない焦りがある。ビリー・アイリッシュちゃんも怒っている。

「大人とか年寄りが私たちの言う事聞き始めてくれたらいいんだけど。私たちがみんな死んじゃわないようにね。年寄りはもうすぐ死ぬから私たちが死んだってどうでもいいんだろうけど、私たちはまだ死にたくないんだよね。」

"Hopefully the adults and the old people start listening to us so that we don't all die. Old people are gonna die and don't really care if we die, but we don't wanna die yet.”

 こんな地球にしたのはあんたたちでしょ? 何もせずに死ぬなんで許さない、子供たちのそんな怒りをひしひしと感じる。

 確かに、私の周りに限って見れば、歳をとっている人ほど、地球をなんとかしなくちゃという責任感は薄いと感じる。今の子供たちみたいに学校でそういう教育も叩きこまれていないし。

 私自身は、地球環境を守るために多少不便な生活をしてもまったく構わないし、生活がちょっと便利過ぎるとすら感じる。でも、これまたマスク着用とかと一緒で、大多数がやらないと意味の無いことにも思える。

 そういう、私ひとりがやったって無駄だし・・・みたいなのも、ビリーの言うところの「年寄り」の思考なんだろうか。

 なにかもう、すべて手遅れに感じる。

 真剣に考えると、私までExistential Risk への不安と無力感で押しつぶされそう・・・。

Year-round schoolを巡る議論 アメリカの夏休みは長過ぎるのか

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行く手に見事な夏雲 もちろんこのあと雷雨

 先日、子供たちの学校の一年が終わり、長い夏休みに入った。

 最後の日はそりゃもうお祭り騒ぎ。先生たちはもう嬉しくてにやけ顔を隠せていない。辛い一年が終わって、(給料付きの)長い休みに入るんですもの。私の子供たちの通う学区は、夏休みの日数、なんと 87日間!!!

「アメリカで学校教員になる三つの理由、それは、June, July and August」

というジョークがあったっけ。今年は先生方の顔が例年より、もっと輝いて見えた。大変だったもんね。命がけで学校を開けて、前例の無い状況で体を張って働いて下さいました。

 今度は、私たち親が頑張る番!!

 日本で、
「夏休みはお昼ご飯作らないといけないから大変、一日中ご飯を作っている気がする」
とか言ってるお母さんたち!! 一日中ご飯作るって言ったって、だいたいそれ一か月くらいで終わりませんか!? こっちは3か月続くからーーーーー!!!

 アメリカ広しと言えども、夏休みがだいたい12週間=約3か月というのは、だいたいどこも同じ。始まる時期は、地方によって多少の前後はありますが。

 かなり昔から続くこの「長い夏休み」の伝統。

 昔のアメリカの6-8月は、子供が農地の管理とか収穫の手伝いとかで人手として必要だったから・・・
 エアコンが無くて暑すぎて皆さん避暑に行っちゃって、夏期は学校やってもガラガラになっちゃうから・・

などなど、こうなったいきさつはあるにはあるんだけど、全部どれも今の時代にぜんっぜん関係無い。

 長い夏休みに対して、日本みたいな感じの休暇カレンダー、つまり一か月強の夏休み、2-3週間の冬休みと春休みをとる学校のことを「Year-round school」と呼ぶ。どちらも休暇日数自体は変わらない。休暇を設ける時季とその長さが違うだけ。

 長い夏休みとyear-round schoolに関しては、ディベートのテーマになるほど意見が分かれている。

長い夏休みのメリット
・ゆっくり休める
・アルバイトやインターンなどの就業体験がしやすい
・学校のエアコン代が節約できる
・一年で一番屋外でのアクティビティを楽しめる季節を屋内で無駄にせずに済む

長い夏休みのデメリット
・宿題無しの3か月で夏休み前の学年で習ったことを忘れてしまう
・夏休み後に忘れた勉強を取り戻すために授業時間がとられる
・家計が苦しい家庭の子供はやることがない(お金持ちの子供は留学したり、高いサマーキャンプに入れてもらえる)
・夏以外の季節で旅行したくてもまとまった休暇が無く、学校を休むしかない

 ・・・なんか、どう見ても長い夏休みのメリットってデメリットに比べて弱いと思うんですけど。

 実はもうyear-round-schoolにしたほうが子供の学力が総じて高くなる、というのは証明されていて、アメリカでもyear-round-schoolを取り入れている公立校は結構ある。
 私が以前住んでいた街でも、本来なら夏休みの真っただ中のはずなのに、子供がわらわらと運動場にいる学校があって、近くにいたアメリカ人に「なんで? 今日、なんかイベント?」と聞いたら、「この学校、Year-roundカレンダーに沿っているから、今日は普通に学校の日なだけでしょ」とあんた知らないのという顔で言われ・・・。そんな学校があるなんて、それはまるでJapanじゃないか! どうやったらこの学校に入れるの!?と鼻息が荒くなったけれど、あっさりと「すごい人気だから無理だと思う」だって。
 そして「私だって行かせたいんだけど、子供が複数いると、上の子が中学校に上がった時に、この小学校に通う下の子と休みがずれちゃうからねえ」。

 そうなんです、year-round schoolのデメリットってこれくらいしか無いと思う。つまり、小・中・高、一斉にそういうふうにしてくれないと、家庭内で従来の長い夏休みをとる子供と短い夏休みをとる子供がいるという状態になてしまう。一人っ子しか使えないシステムになってしまうというわけ。

 私は、実は長い夏休みはアメリカの格差社会の一因にもなっていると思う。貧乏家庭の子は、長い休みがあったってなにもできやしない。家でゲームしてるか近所の同じく暇な子とつるむくらいしかできず、それが三か月続く。親だって仕事で忙しい。その間、お金に余裕があるおうちの子は、日本で言う所の夏期講習に通ったり、家庭教師やベビーシッターを雇ってきっちり子供の面倒見させたり、大学入試に有利なアクティビティやらたっぷりできる。夏の三か月で、後で取り返せないくらい大きく差がつく。それが毎年毎年積み重なって行く。

 先生たちだって、実はyear-roundのほうが燃え尽きやストレスが少ないっていう調査結果もある。

 結局、長い夏休みの伝統が無くならないのは、「変化が怖いから」、これとあとはビジネスの都合だけのように思う。レジャー施設とかサマー・キャンプとかそういうビジネスは、長い夏休みでたんまり儲けているから。遊園地とかyear-round school導入には全力で反対じゃないかな。

 子供たちのことを真剣に考えたら、頭が柔らかくてどんどん吸収する二度と来ない大切な年齢に三か月も勉強無しでほったらかしにしないほうがいいと思うんだけど。絶対にアメリカ人の平均学力低下の原因にもなってるって。子供なんて、子供だからほっといたらろくなこと無い。日本みたいに読書感想文だの自由研究だのたんまり宿題あるのも、親としては頭痛がするけど。

 今後は、どの学区でも、小・中・高を通して、year-roundのカレンダーを選択できるオプションを設けるようにしてほしい。つまり、長い夏休みか日本型の夏休みか、家庭に選択権を与えて欲しい。それか、どうしても長い夏休み制度を維持したいなら、無料で夏期講習開催とかスポーツ教室とか、何かお金が無い子も参加できること、できませんかね? はっきり言って、子供だって、学校が休みになって喜んでいるのは最初の1-2週間くらいで、あとは暇そうです。

 無料で公園でランチ配布するのはやってくれてるんですけどね。

 もう、食べ物以上のことはできかねますので、まああとはせいぜい頑張って学校始まるまで生き延びてね・・・ってか・・・?

 その公園ランチも、親が車で連れて行かないと行けない場所だったりするし、結局学校側が色々用意してくれても子供に移動手段が無いとどうにもならないわけで・・・。

 子供は生きづらいよね、本当に。頑張って行き延びるんだよ。

精神科に行ってきた

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 生まれて初めて精神科という所に行った。ぐったり疲れた。

 ちなみに私自身のためではなく、ここ数か月恐ろしく行動が狂暴化している我が家の重度自閉症児のため。

 最近は、「Metal Health」とか「Psychiatry(精神科)」とかそういう呼び方じゃなくて、「Behavioral Health Clinic」とかいう名前にしている医院が多くなったきた。問題行動外来、みたいなニュアンス? そのほうが、アルコール中毒とかうちの子みたいな発達障害による問題行動とか、広範囲な症状を含めやすいということなのかな。

 でもやっていることは、多分従来の「精神科」とおんなじじゃないかな。精神科の先生とか看護婦さんに会って、要は「薬を出してもらう」、これです。

 自閉症児の親になって驚いたことのひとつに、自閉症の治療・回復・改善と担当するのが、医者じゃなくて心理学者、心理療法士ということだったんだけど、彼らにできなくて医者にできること、それが「薬を出すこと」。

 行動療法など薬を使わない方法でどうにもできない段階、あるいはそういった薬なし療法に空きが無くどうにもできない状況の場合、精神科に行って少しでも子供を落ち着かせてもらうために薬をもらうことになるわけだけど・・・。
 
 今ね、精神医療も非常事態なんですよ~、パンデミックのせいで。

 コロラド州の児童精神医療業界は、非常事態宣言を出したって。

 パンデミックは特にティーンをハード・ヒットしたようで、自殺願望と戦う中高生たちへの医療の提供でもう精神科が追っつかなくなっているそうです。

 私の住んでいる地域もどうしてこうなった!?という感じで、精神科に予約とろうとしても「3か月先ですね」とか。自閉症関連のセラピーは何年も待ったり、「新規の患者は受け入れていません」だったり。

 私は小児精神科に予約をとるための電話で涙声で、

「キャンセルが出たらすぐに連絡下さい。子供が自分を傷つけたり、周りの人に怪我をさせたりするかもしれないし、怖いんです」

と訴えましたよ。

 そうしたら、どうしてもやばかったら精神科の緊急外来かERに行ってくれって。そうかそういう手があるのか・・・とその時はなるほどーなんて思っただけでしたが、我が子にもついにそうするしかない段階が来て、連れて行きました。
 緊急度で言うと、ER(Emeregency Room)>緊急外来(Urgent Care)>予約して行く精神科、という感じなので、いきなりERに行くのはどうかと思い緊急外来に行ったんですけど・・・。

 体は健康でちゃんと歩けるのに、駐車場でひっくり返って寝られたりすると動かせないから、車椅子に乗せて連れて行くしかない。 病院の入り口で、びっくりしたのが、警備員に金属探知の検査されたこと。武器を持っていないか、それを調べるための専門の人がいるとは。でも、医療従事者にとっては、精神的に不安定な人が銃とかナイフとか持ってたら、もう命に関わるもんね。

 あとは、問診票が「自死」に関わる質問だらけだったことでしょうか。既往症を問うとかじゃなくて、「死にたいか?」「過去2週間で自殺を試みたか?」「方法を考えたことはあるか?」等々、要は「自ら命を絶つリスクを測る」ための質問にしぼられているのです。 緊急外来の一番の優先事項がなんなのか、よくわかる問診票でした。

 そういう外来の何がいやって、予約じゃないから順番が来るまで待つことですよね。「あと何分待てばいいよ」と先行きを示して落ち着かせることもできない。先が分からないと不安がピークに達する自閉症児には地獄・・・。病院に行ったら殺される、くらいの恐怖を真剣に抱いているみたいだし。(うちの子は会話ができないので私の推測に過ぎませんが)

 しかし、どれくらい待つのか・・・という心配は結果的には要りませんでした。ストレスが極度に達したのかうちの子、待合室で15分くらいしたら暴れ出してしまって。叩くわめく床に転がるテーブルに上がる等の攻撃的な奇行を始め、車いすに固定しようとしたらシートベルトのバックルがバキッと折れ・・・なんのためのシートベルトだよ、まったく・・・。

 今はこうして振り返って落ち着いて書いてますが、その時はもう私もあわわあわわとなっていて、待合室の雰囲気も凍り付き、修羅場を察したのか、すぐに中の診察室に入れと通されました。

 で、職員さんにすごく怖い顔で、

「ここでは、すぐにそういった症状を落ち着かせることはできません。すぐ隣に専門のERがあります。そこに行けますか? すぐに入院できますよ。様子をモニターしながら投薬できるので、比較的すぐに症状に対処できます!!」

と言われ・・・。確かにその時も頭に壁をゴンゴンしたり、私を叩いたりしていたんだけど、私にとってはこのところいつものことで、慣れっこだったので、職員さんの恐怖の表情を見て初めて、

「ああ、そうか、そんなにひどくなったんだな。知らない人が見たら、びっくりして入院させろってすぐ言うくらいひどくなってたんだな」

と茫然と認識した。こんな状態で学校に送り出して、みんなに迷惑かけたり、この数か月はほうぼうに謝りとおしだったもんなあ・・・。どうしてもっと早くなんとかしなかったんだろう。

私もすごく怖くて疲れていたけれど、せいいっぱい、

「いつもこうじゃないんです。今は慣れない病院でこんなふうになっているけれど・・・、夜に全然眠れていなくて、頭を壁に打ちつけたりしているせいで、昼間のストレスもひどいのかもしれません。睡眠を改善したり、できることをもう少し自宅でやらせて下さい。そのための薬や、治療やアドバイスはありますか? 入院は、Last Resort(最終手段)のように思えます。」

と下手な英語で伝えました。

 その後も、本当にだいじょうぶか、自宅で面倒を見切れるのか、自身や他人を傷つける危険を感じたらすぐにERへ行け、等言われ、何人ものセラピストやナースに同じようなことを説明し、何時間もかかって薬を処方してもらって解放され・・・。 リスペリドン(リスパダール?)って統合失調症のお薬だと思っていたけれど、自閉症にもつかわれるんですね。やはり、両者は何かつながりがある、「脳の障害は全部同じスペクトラムの上の違う場所に過ぎない」説は本当だと思いました。

 しかし、つくづく思った・・・。

 精神科は、精神的に元気じゃないと行けない!!

 もうね、精神的に参っている人が精神科に行くのは、ハードル高過ぎます。

 昔、コントで、老人二人が病院の待合室で、

「○○さん、こんにちは~」
「あら△△さん。今日も病院混んでますね~」
「ええ本当に~、アッ、××さんが来ていない。」
「××さん、病気かしら。怪我かしら。」

とかしゃべっているのがあったけれど、ほんとそれ。

 精神的に本当にやばい状態だったり、行動が狂暴化していたらね、もう家から出られない、出せないんですよね。そうなる前に、もっといろんな医者に会っていてもよかったなと今は思う。

 うちの子、外に出せない・出られない、の一歩手前だから。

 そういう人のために、Tele Healthっていうコンピュータ越しのサービスもあって、次回、お薬がどう効いているか今後どう調整していくかに関する診察は、そのTele Healthでやるか、ということになっている。本当に本当に助かります。

 長い長い夏休み(87日間!!)、私ももう一度最初からやり直すつもりで、子供と向き合ってみようと思う。気合でどうなる問題でもないんだけど、夏休みが終わるまでに少しでも回復させてあげたい。

 でも私に、できるんだろうか・・・?
 

あのトランプのブログですら読まれない SNSの影響力大き過ぎ怖すぎ

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画像は本文とは全く関係の無い、先日公園のベンチで見かけた全裸美女 怖い

 6月2日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事:

「トランプ氏、ブログを閉鎖 少ない読者に不満」
www.nytimes.com

 みんな・・・どうしたの!?

 トランプがやれと言ったら職も何もかなぐり捨てて国会議事堂に乱入したり、ウィルス蔓延しまくって病院や葬祭場があふれている時でもマスク無しで何千人もぎゅうぎゅうになって集会したり、トランプ様のためならなんでもやるんじゃなかったのー!?

 でもそんな人たちでも、

「ブログをわざわざ読みに行くのはめんどくさいや」、

というこの不思議・・・。

 トランプ元大統領のブログ閉鎖の理由は、「あまりにトラフィックが少なく(読んでくれる人が少ない)、本人が影響力を失った小さな存在ととらえられるのを嫌ったため」だそうです。

 メジャーなSNSからいまだに軒並み追放を食らっているトランプ元大統領、このブログがネット上での唯一の発信だったわけですが、それすらやめてしまい、今はまったく別のプラットフォーム、おそらく新しいSNSの立ち上げ等を計画している様子。

 私は、いかにトランプが愛されているかをひしひしと感じる地域に住んでおります。今だに、玄関にトランプ支持の大きな旗をひらひらさせている熱心な支持者(信者と書くべきか)のおうちが近所にちらほら。 

 こうやって積極的にアピールするほどではないけどトランプを熱心に支持している人ももちろんまだたくさんいると思われ、この今回のブログ閉鎖の件は、私には「トランプももう終わりだな」ではなく、「やっぱブログはもう終わりだな」にしか思えません。 積極的に情報を発信するツールというより、やっぱり「自分史の記録」ツールなんでしょう。

 今は、もうみんなSNSなんですよね。

 いくらネットの海で花火を打ち上げても、「花火があがってるよ」「あそこになかなかいい花火上げてる人いるよ」と世界に中継・宣伝・拡散してくれる「何か」が無いとひとりぼっち・・・。

 このブログを書いているはてなブログだってSNSなわけですし。読者登録の機能とかありますからね。拡散されて誰かの携帯なりコンピュータなりの画面に勝手にプッシュされる仕組みが無いと、わざわざ誰かのブログに読みにはいかないですよね。

 人間はどこまでめんどくさがりになってしまったのか!? 

 大好きなトランプのブログをお気に入りに入れて、たまに覗きにいくのすらめんどくさいですと!?

 ついこの間まで土器で生活して洞窟の壁に絵を描いて貝塚にゴミ捨ててたのに・・・。

 だがしかし、ここまでSNSが大きなものになってしまうと、その使用を抑えようという動きも出てくるのではないかと予想しています。

 Appleがスクリーン・タイムの機能を入れたのは、iPhoneだのiPadだのを売りつけている行為と矛盾しているのだけど、あまりに便利だったり使われ過ぎたりすると人々の生活に弊害が出るようにもなってしまうので、歴代人気商品では常々行われてきたマーケティングの方法のひとつ、とも聞いたことがあります。
 つまり、Apple側としては、
「iPhone買ってね! どんどん新しいの出すからね! いっぱいいっぱい使ってね! 24時間寝ないで使ってくれてもいいよ!! 中毒なんて心配要らないよ!!」
という売り方は長期的に観て商品の売り上げをゆるーく下げていく要因になるので、商品を「みんなが健康な生活を送りながら使える商品」、という存在にしたほうが長い目で見ると商品が生き残る・・・という戦略のようです。

 アルコール飲料だのタバコだのに中毒の危険性が書かれていたり、車にシートベルトが導入されたのも同じような理由だそうで・・・。ユーザーや消費者の便利に傾き過ぎるとかえって商品やサービスから人が離れてしまうらしい。

 SNSはこの点、まだなんの対策もなされていないけれど、大丈夫なのかなと少し思います。人々の生活を楽しく便利にしているけれど、かなり大きな存在になり過ぎてマイナス面も出てきているように思う。これから、Appleのスクリーン・タイム機能みたいに各社が何か対策を考えるんだろうか。どう対策するのか、すごく興味深い。

 ところで、私には、SNS繋がりじゃなく、携帯のFavoritesに登録しておいて「定期的にわざわざ読みにいく」行為を何年も続けているサイトがいまだに少数あるんですが、よく考えると私にそうさせているそのサイトたちはすごいということですな。 トランプ信者がトランプへの愛をもってしてもなしえなかったことを、私に何年も続けさせているわけですから。

 本当にいいものだったら見ている人は見ている、ということかなあ。

なおみちゃんは悪くない! なおみちゃん支持! テニスの敗者インタビュー、要らん

「ナオミがかわいそう。ハグしてあげられたらって思う。彼女の気持ちがわかるから。この件はもう、彼女のやりたいように、本人がベストだと思うやり方で対処させてあげるべき。」

“I feel for Naomi.
I feel like I wish I could give her a hug because I know what it’s like.
You just have to let her handle it the way she wants to, in the best way she thinks she can.”

上記は、大坂なおみさんのテニスの全仏オープンの試合後会見拒否、トーナメント辞退騒動に対するセリーナ・ウィリアムス姐さんのお言葉です。

いやあ、もう・・・・・・さすが!! 
四大大会23回優勝の女は違う!! 
さすが大ボス、まさに女王です!!

そうですよね、セリーナさん!? そう思いますよね!?

なおみちゃんが日本国籍選択した時は、「ありがとう」とか言ってたくせに、ブラック・ライブズ・マター絡みで出場辞退したり、こうやって今回みたいな騒動起こしたり、ちょっと「出る杭」になった途端、「わがまま」とか「そういう契約でしょ」とか「真央ちゃんだって頑張ったのに」とか手のひら返ししてる奴ら!! 

試合後会見は大変なんだぞ~!!

やったこと無いけど!!

テニスをプレイすらせず観戦するだけの私でも、あの試合後会見、特に敗者にまで会見を義務付けるのって必要かなあと常々思っていました。観ていて辛すぎる会見が多過ぎる。勝った人はまあいい、でも、敗者はいいでしょ敗者は。勝者へのインタビューだってプロ野球のヒーローインタビューとかみたいな雰囲気じゃないし。なんか集中砲火っていうか・・・。

テニスの敗者インタビューが私はだいっきらいです!! 観たくない!!

特にあの4大大会の決勝の後。

負けた選手に、インタビューに加えて、表彰式でスピーチさせるあの無神経さ!! インタビュアーだって辛いと思うんだけど。あれってほかのスポーツでもやるんですか? 

全てを賭けて追って来た夢が破れて、もうきっと決勝まで来られるチャンスも無いのかもしれないという失意の瞬間に、「今どんなお気持ちですか」と聞かれて、優勝した相手を称えなければいけない辛さ。表彰式に出るだけでも辛いんだから、もう勘弁してやれ、といつも画面から目を逸らしてしまう。

2009年のウィンブルドンでフェデラーに負けたロディック。もうこれを逃したら次は無いなという決勝で負けた時のインタビュー。目が死んでいる。観ていて辛いだけだった。なんかメディアにとってはこれも美しい感動の瞬間なのかもしれないけれど、あまりにも本人の気持ちを無視しているというか・・・。

https://youtu.be/Dn7dQJJ0AR4

2012年のこれまたウィンブルドンで、開催国の期待とプレッシャーを一心に背負ってフェデラー(またかい)に負けたアンディ・マレーのスピーチもつらかったっすね。マイクを持って、「(このスピーチを)頑張ってやってみるけど、やっぱこれキツイね・・・」と泣き出してしまって・・・あんな姿を見る家族もかわいそうでした。

https://youtu.be/WzCB4YQXPeM

負けて泣いてる人にインタビューとかスピーチとかやらせて、全世界に放映して・・・いくらスタンディング・オベーションでその姿を称えても、なんか敗者の悔しさ悲しさを搾取しているだけというか・・・。 (敗戦インタビューの動画のリンクを貼っている私もその一味か)

まあ、一般人って彼らほど何か一心に頑張って夢破れて、っていうそういう経験も無いからその姿もまたエンターテイメントなのかな。でも、それって、そんな形で娯楽にされ続けることが、長期的に観てテニスというスポーツの発展に繋がったり、選手を強くしたりということにつながる気がしないんだけど。

いつもいつも「もう勘弁してあげて」と思うだけ。

身内を亡くしたばかりの人に、「ねえ、悲しい? どういう気持ち? なんで死んじゃったんだと思う?」って聞いてるみたい。スポーツの敗戦と人間の死を一緒にすんなって言われそうだけど、試合直後はもうズタズタで魂が死んじゃってる選手だっているんじゃないの?

敗者も会見しないとダメ、とかってほかのスポーツでもやりますかね?
野球で敗戦投手インタビューとかありましたっけ。監督はいちいち勝っても負けてもコメントしていたように思うけど。

テニス特有の伝統なのかな。「テニスを紳士淑女のスポーツ」にするために、負けても相手を称えるコメントをせよ⇒どんな精神状態でも毅然とメディア対応せよ、みたいな伝統・・・?

なんか・・・テニス選手って冷遇されているなあと思う。

一年中、世界中をドサ周りみたいに試合して歩いて、休みは一か月くらいしか無い。たくさん出ないとその後が不利になる仕組みになっている。チームにうじゃうじゃ替えがいて、年間17試合とかしないのにじゃんじゃん稼いでるNFLとは大違い。
一人でそうやって頑張って試合してんのに、試合後の会見拒否したら罰金、とか、もうなんか・・・選手の組合かなんかが弱いの? 圧倒的にプロテニスの連盟とか大会主催者が選手をこき使っていて、リスペクトが感じられないというか・・・。

なんか、体質が古い。

なおみちゃんはそういう体質にうんざりしていたんじゃないかな。

「罰金」っていうのがね、もう、バケツ持って廊下に立ってるカツオ君レベル。だいたい、連盟とか大会とかが、なんか選手たちにテニス界発展のためにやってもらいたいことあったら、「やらなきゃ罰」みたいなやり方じゃダメなんだって。自閉症療育でも言われてるよ? 罰で人の行動変えるのは長い目で見るとマイナス、つまり「○○をやらないと悪いことがあるぞ」ではその○○という行動は強化されず(されても一時的)、最終的に○○がイヤになってしまう。が、「○○をやったらいいことあるぞ!」を叩き込めば、その○○という行動が身に着く。

ここは思い切って、
「試合後会見を行った選手は賞金10%増し。敗者インタビューは特にやるのがキツイので、負けの悔しさを癒す高級マッサージ無料チケット、やけ酒用高級ワイン、帰路の飛行機代割引クーポン等が詰め合わせのギフトバッグもプレゼント!!」
くらいやったら?? 立ち直りの早い選手とか、メディア対応が得意な選手とかは、インタビューで稼ごうと思って頑張るかもよ? で、メンタルに自信の無いなおみちゃんみたいな子は、拒否に次ぐ拒否・・・。
「オーサカ、またもや会見拒否! 次戦にビビッているのか!?」
とか、そういう憶測もまた楽し。

選手それぞれが好きに選択できるようにしたら、もっとインタビュー全体の雰囲気も良くなるかも?

今は、SNS使って発信したり、ファンサービスもいろんな形があるんだし、「勝っても負けてもメディア対応しろ。しなきゃ罰金。ナオミ、もうお前は四大大会出られないぞ」
みたいなこと言ってると、どんどんテニスが衰退しそう。

今までどの選手だって頑張って来たんだ!とか言ってる人もいるけど、そんなこと言ったら何も変わんないって。

「お母さんたちの時代はねえ、子供3人も4人も産んで、父親は午前様でも文句言わないで家庭を守ったものよ!」
「昔の男たちは黙って戦に行ったんだぞ!」
「中世の娘さんたちは貞操守るために鉄のパンツはいてたのよ!」

↑↑↑上記が「今まで頑張って来た人たちだっているんだから」で続いていたら大変。

いつも「出る杭」が何かを変えるし、やっぱ「出る杭」は打たれるんだよね。

なおみちゃんはかっこいいよ。

セリーナだって、なおみちゃんだか若い子だかに負けた時、「ごめんなさい、今は話せる状態じゃない」って会見拒否して罰金とられていたことがあった。

なおみちゃんだって、毎試合そうすればよかったのかもしれないけど、最初からそのつもりならきちんと先に言おうと思ったのかな。彼女なりに筋を通して、何かを変えようとしたのかもしれない。

うつ病に苦しんでいてしばらくコートを離れたい、という発表、とても心配だけど、まだなおみちゃんは23歳。女子のピークは早いけど、なおみちゃんなら回復して戻ってくれるはず。

なおみちゃんは、コート上でもコート外でも至宝。

応援してるぞー!!!

花粉症は治せるのか? Immunotherapy(免疫療法)の経過メモ(2)

前回に続き、ひたすら季節性アレルギーの話の続きです。
前回↓
blog.writedreamlive.info

気になるお値段

 どの病院でもそうだけど、初診の際に延々と問診表(過去の病歴とか)を書かされるあの苦痛の時間がアレルギークリニックでももちろんある。しかし、「手書きとタブレット入力のどちらにしますか」という受付嬢のオファーに今どきを感じた。
「タブレットで! 私のスゴイ手書きをあなたに解読させちゃかわいそうだから!」
と言ったら、ニコリともしない冷たい感じのロシア系受付嬢が笑顔になってくれた。嬉しい。
 そして毎回こういう問診票記入時に思う・・・。
「ドラッグやってますか? やっている人はどれくらいの頻度ですか?」
この質問には、やってる皆さんはやはり正直に答えるんだろうか。治療に影響するから正直に答えたほうがいいと思うけど。Yesと書いたらどうなるのかが知りたい。入国時の書類の「あなたはスパイですか」という質問と同じく。
 問診表が終わった頃に看護婦さん登場。今日の来訪の目的やらアレルギーの症状やら再確認があって、若干やりづらそうに料金表を差し出してくれた。
「あなたの保険だと、だいたいこのくらいが自腹(out-of-pocket)になりそうなんですけど・・・チラッ(←払えますか?というような目線をこちらに向けている)」
 こういうの、助かる。前回の記事の終わりに書いたようなびっくり請求を経験している私は、十万近くかかるかもと身構えていた。でも、テスト自体は100ドルちょっと(一万円強)くらい。拍子抜けした。もちろんその他に先生の診察代や免疫治療の注射代なんかもかかるから、全部合わせると数万円の出費になるけれど、これでアレルギーが治るのなら・・・いや、症状が軽減するだけでもいい、それでも出す。
 それにしても、アレルギーテストが安過ぎる。娘のインフルエンザと溶連菌感染症のテストはこれよりとられたぞ。あれはUrgent Careという準・救急病院みたいなところでやったからか? 
 桁が間違えてるんじゃないかと紙を見ながら悩んでいる私の逡巡を「お金が無い人」ととったのか看護婦さんがあたふたしている。
「本当に検査ってこれだけですか? 採取した血液をラボに送るような検査はいつも数百ドル(うん万円)とられるから意外で・・・」
と聞くと、
「もう一回確認するわネ、あなたの場合は合計64プリックだから・・・やっぱりその金額よ」
とニコニコしていらっしゃる。待って待って、プリック・・・prick・・・刺すってこと・・・?
「ろ、六十四回も血をとるんですかっ!?」
と目を見開いて尋ねると、
「オウ、ノーノー、血液はとらないわよ」
と、今日やる検査がいわゆる「Skin Prick Test」であるという説明が。勝手にたくさん血をとられると思って、しっかり朝ごはん食べて来た私はバカっぽい。
 なんでも、いろんな種類のアレルゲンを先につけた針を皮膚に刺して判定するそうで、ラボに検体がいくような試験ではなかった。それで良心的なお値段だったというわけか。
 ちなみに、アメリカの医療費請求ははっきり言って「請求書が来るまで誰にもわからない」。こんな感じ。

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アメリカの診療費請求 心臓に悪い

 Wordのアイコンで作ったんで、カッコ悪い説明図ですみません。でもほんとこんな感じで、忘れた頃にすごい請求書が来たりする。今回はそうじゃないといいけど。

テストを受ける

 テストの前に、アレルギークリニックの私を担当してくれるお医者さんと対面。アジア系の男性医師でなんだか嬉しい。アジア系、特にインド系のお医者さんがどんどん増えているなあと感じる。ちなみにヒスパニック系、アフリカンアメリカン系のお医者様にはめったに会わない。地域柄もあるのだろうけど、医療業界はアジア系人種が特に参入しやすい世界なのかも。
 しかし、このN先生、お話になる英語が・・・英語がよくわからない・・・。ベトナム系の方のようで、英語にアクセントがあるということは、生まれた時からではなく途中からアメリカに来たんだな。よくぞここまで成功された。移民として大変なこともあったろう。ご両親も誇りに思っておられるだろうな。などと一気に尊敬の念は湧くものの・・・英語がわからない・・・わかりづらい・・・。インド系の方の英語も辛いけど、ベトナム系の方のアクセントも強い。でも、故ルース・ベイダー・ギンズバーグさんのお顔がプリントされたマスクがキュート。
 とかどうでもいいことに気をとたれ、70%くらいしか話が理解できない段階であれよあれよという間にN先生が部屋を去り、看護婦さんが戻ってきてテストが始まった。
 上半身裸でうつぶせになり、髪が首から下に行かないようにしっかり手で束ねて押さえろと言われ、背中から腰にかけて一面に次々と8本脚の針がついたものをハンコのようにぐりぐりと押し付けられる。針の先にアレルゲンの入ったオイルが付いているから、それがたれないようにじっとしていろとのこと。痛みはそれほどでもない。でも、子供ならギャーギャー言うだろうな。
 15分、診察室に一人残されうつぶせになって待つ。寒い。そして、15分の終わりくらいから背中がムズムズとかゆくなってくる。か・ゆ・いーーーー!!

 痛いのも辛いけど、かゆいのもつらっすよね・・・

次回に続く・・・

花粉症は治せるのか? Immunotherapy(免疫療法)の経過メモ(1)

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爽やかな新緑の季節は地獄

私と花粉症

 それは18歳、高校三年生の時に突如始まった。
 それまでは、春先に鼻をグズグズ言わせて「花粉症なの・・・」と元気が無い友達を「ふーん、大変だね」と完全に「他人事」の立場で気の毒に思っていたのに。
 気候が爽やかなで最高な初夏、五月に、目がムズムズと痒くなり風邪でも無いのにどうやっても鼻水とくしゃみが止まらないなんとも言えない不快な状態が一か月続いた。その時はわからなかったけれど、それ以来毎年そのシーズンに同じ症状が現れにつれ、やっと「これは花粉症というやつでは」とピンと来た。
 謎なのは、他の花粉症の皆さんと時季が二か月くらいズレていることだったけど、まあ杉ではない「何か」に反応するアレルギーのようだった。だから正直「花粉症」と呼んでいいのかわからない。英語言うところの「Seasonal Allergy(季節性アレルギー)」がぴったりな呼び方な気がする。気候が爽やかな初夏に最悪にひどくなり、気温が上がりきって夏になるとピタリと止まる。
 憂鬱なのは、年々症状がひどくなり症状が続く期間も少しずつ少しずつ延びていったこと。目がやられるのは、ド近眼の私には日常生活で機能できなくなることに等しい。コンタクトレンズができず、眼鏡で過ごすとなると生産性が40%くらい下がる。眼鏡で視力が出せないくらい目が悪いから。眼鏡だと見えない。
 学生の時はよかったけれど、働くようになってからはこのアレルギーの時季は地獄だった。鼻水やくしゃみは薬である程度止められるけれど、コンタクトレンズだけはその時季どうしても装着できなかった。目の炎症がひどすぎた。「かゆい」はとっくに通り越して「痛い」。目の周囲も腫れ上がり、人前に出るのも嫌だった。常に頭がぼんやりとし、気分も落ち込んだ。一年のうち何も手につかない1~2か月が毎年来るように。
 とにかく18歳から徐々に徐々に人生を侵食してくる存在・・・それがアレルギー。
 そんな私が渡米することになった。

「もしかしてアメリカに行ったら、植生も全然違うしアレルギーが無くなるのでは? 人生変わるかも!」

お薬天国アメリカ

 もちろん私の人生にそんなハッピーエンドがあるわけがない。
 むしろ、渡米後に強烈にアレルギーが悪化していった。しかし、その頃は英語もろくに話せず、病院に行くなんて何をどこから手をつけていいのか?状態だったから行けなかった。
 アメリカには私とは理由は別だけど病院に行けない/行きたがらない人も多い。診療費がべらぼうに高いから。日本にいる時は、簡単に病院に行っていたけれど、アメリカに来てからは「いくらかかるんだろう」とまずお金が気になる。そういう人、多いと思う。そのせいか、予防や自力回復を目指すためのマーケットがすごい。サプリメントやら薬やら、日本では処方箋が必要なものがずらーっとその辺に売っている。アメリカ生活をやめて日本に引き上げることになったら、何を買って帰るか・・・と考えた時、究極、書籍とかメラトニンとか薬かなと思う。
 話を花粉症に戻すと、渡米後、アレルギーで眼球の炎症がますますひどくなり落ち込む私に、配偶者がネットでいろいろ調べて目薬を買ってきた。前年までアメリカでも処方箋薬だった強い目薬で、ちょうど私が渡米した年にover-the-counter(市販薬)扱いになったらしい。ボシュロム社の「Alaway」というやつ。これがものすごく効いた。もうその日からAlawayのとりこ。Alaway最高。

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最近では、Wal-martやTargetなどの全国チェーンのスーパーで同じ成分の自社版Alawayコピー品も安く売られるようになり、そちらも試したけど効き目は本家本元と同じでよかった。
 最近かかった眼科医は、「AlawayよりZaditorのほうが強いはず」というので、Zaditorも試したけれど、私には効き目の違いが感じられず、Zaditorのほうがだいぶ高いのでZaditorはもう使っていない。
 というわけで、渡米後数年はAlawayで辛い時季をだましだまししのいでいた。鼻水・涙・くしゃみを止めるのは日本から持って来た鼻炎薬。
 しかし、日本の鼻炎薬はとにかく眠くなるし、徐々にアメリカのスーパーで勢ぞろいしている眠くならないアレルギー薬を服用するようになった。一通り試したが、恐ろしいことに効くのは最初だけでどれもだんだん効かなくなる。結局、一番ひどい時季は強烈に眠くなる一番強いやつを服用量の上限まで飲むようになってしまった。ただでさえ、アレルギーがある時は就寝時に目を突き刺すような痛みで眠れず睡眠不足なのに、そんなふらふらになる鼻炎薬にまで手を出して、アレルギーの時季はもやは廃人。鼻炎薬ジャンキー状態。人間として使い物にならない。
 しかし、そんなお薬だって、渡米生活の全期間の五分の1くらいを占める妊娠期間中は飲めなかったわけだし、とにかくアメリカでのアレルギーは地獄だった。なんと昨年からは秋にもひどい症状が出るようになって目が開けられないくらいになった。

 もう・・・これでは生きていけない・・・。

 社会復帰をめざすべく仕事を探していても、「こんなにひどいアレルギーでは家庭から出て働くことなどできない」という結論に達してしまう。しかし、私はこれまでの人生で「花粉症を克服した」「アレルギーが治った」という人を見たことが無い。

 このまま、アレルギーに人生を奪われていくだけなのか。

 おおげさに聞こえるかもしれないけどそれくらい切実な状況・・・。

免疫療法のクリニックを近所に発見

 英語で医療関係の情報を読むのが本当に苦手なのだけど、色々と最新情報を調べてみたところ、季節性のアレルギーにも免疫療法(Immunotherapy)があることがわかった。
 免疫療法・・・ちらっと聞いたことはあった。アメリカにおけるアレルギーの横綱ピーナッツ・アレルギー、そのアレルギーに苦しむお子さんの親御さんから。ピーナッツ・アレルギーは本当に深刻で少量でも命に関わるケースも多い。で、少しでも危険なアレルギー反応を軽減するために「アレルギー反応を引き起こす原因物質を少しずつ注射して体を慣らす治療を娘がしているが、この間その注射で悪い反応が出てERに行った」とおっしゃっていたことを覚えている。そんな恐ろしい治療法をするなんで、ご両親もお子さんもキツイだろう。しかし、それがうまくいってアナフィキラシーショックに怯えずにすむ将来があるのならやる価値があるのかもしれないな・・・命がかかってるもんな・・・などと思ったものだ。
 なので、そういった免疫療法は命に関わる深刻なアレルギーだけだと思っていた。私のアレルギーは切実な問題ではあるけれど、死にはしない。薬で症状を緩和するだけで根本的には改善の余地は無いのだろう・・・とあきらめの境地だったけれど、どうやら近所のアレルギー専門クリニックのホームページの「患者さんからの喜びの声、続々」の欄には、
「屋外でのアレルギーとペットアレルギーの両方に生涯苦しんできました!このクリニックの治療法で、もうアレルギーのトリガーになるものを恐れずに生きられるようになりました。」
と書いてある。ペットアレルギーだって死にはしないけど、なんらかの治療はあるということか・・・?
 このクリニックに行ったところで今より悪くなることはないだろうし、アレルギーテストを受けて、敵の正体を正確に知るだけでも価値はあるかもしれない。失うものは何も無い。お金以外は・・・。
 私には、アレルギー検査に関わる出費で痛い経験がある。
 私は重度自閉症児を育てているのだけど、やつが2歳の頃、藁にもすがる思いでセラピストの手引きで今にして思えば怪しげなクリニックにかかり、
「自閉症児には腸に問題がある子が多い、食物の遅延アレルギー*1の検査をして徹底的な食物療法をすべきだ」
と言われて、血液をサンプルにした遅延アレルギー検査に約17万円とられたことがある。その検査をできるのはアメリカ国内に一か所しか無いし、保険も効かないそうで。障害のある子のためにどんなことでもする、そんな親の気持ちを完全に食い物にしている。もしかしたら悪意は無く、真剣に良いことをしていると思っているのかもしれないけれど、返ってきた結果を元に、
「お子さんは、こんなにたくさんの遅延アレルギー反応が出てるんですよ。見て、ほらこれらのすべての食品がダメです!!」
と食事療法をとうとうと語る医師にうなづきながら、私は黙って心の中で思った・・・。「先生、アレルギー反応が出ている食品はすべて前の日に食べたものです・・・テスト結果は前日の食事の影響を受けているだけです・・・それとも先生は私がテストの前日に子供の遅延アレルギーにドンピシャな食品を何品目も偶然食べさせたとおっしゃるんでしょうか・・・」
 つまり、限りなくインチキくさいアレルギー検査に17万円払った経験があるのだ。今よりもっと貧乏だったのに。
 今回行こうと思っているアレルギーのクリニックではちゃんと信用できる検査をしてくれるのだろうか。夫には、「あのインチキ検査ほどはとられないはずだけど、血液検査はたいていウン万円とられる。でもどうしてもアレルギーを良くしたいから検査を受けてみていいか」と事前に断りを入れ、病院を予約した。

 おっと、今回は前置きで終わってしまった。次回に続く。
 

*1:アナフィキラシーのような即時の反応ではなく、体調を悪くする、つまり食べ物が体に合わない・・・というようなアレルギー

たった一年で衰えた

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ちょうど一年前のCostcoでの写真 この直後、上記の全てが入手困難になった

「私は長距離走を走っている。
もう走り始めて長い時間が経つ。
疲れ果てて息も苦しく脚は重い。
止まってしまおうかな・・・。
少し歩いてからまた走れば元気が出るかもしれない・・・。
そんな心の誘惑の声が聞こえる。
いや、だめだ、ここで休んだらもう一度走るのはもっとしんどくなる。
なんとか脚を前に出し続けるんだ。頑張れ頑張れ。
そうやって、気持ちを奮い立たせて走り続けていたら、突然目の前に自転車に乗った子供が飛び出してきた!
慌てて立ち止まる。
なんとか飛び出してきた子供と衝突することは避けられた。
子供は行ってしまった。
しかし、走り続ける意欲はぷつりと切れ、私は残りの道を重い脚をひきずりながらぷらぷらと歩くしかなかった。」

長距離走を走っていたのが、パンデミック前の私。
飛び出してきた子供がパンデミック。
もう二度と長距離走に戻る気が湧かないのが現在の私です。

アメリカにコロナが上陸し、私が居住している地域がいわゆる「ロックダウン」状態に入ったあの時からもうすぐ約一年。

ここ数週間は少しずつウィルスの感染状況も終息に向かっている感じで、ワクチンの配布も進み、これ以上はひどくならないだろうという感じになってきた。

そして、昨日、そろそろ子どものスイミングのレッスンでも申し込むかという段になって、唖然とした。今の生活に、毎週たった一回のそんな予定が入ることがめんどくさくてしょうがない。なんかそういうものが入る余地が無い。重い腰を上げる、という言葉があるけれど、腰が、上げられないくらいくらい、重い。結局、「まあいいや、まだ間に合うしあとで申し込もう」。得意の「先延ばし」である。

「毎朝弁当を作って配偶者を送り出し、就学児たちを学校に送り出し、未就学の幼児をたった2時間ちょっとの幼稚園に毎日送迎し、幼稚園以外の時間は図書館だのプレイグループに連れて行って相手をし、放課後は障害児を療育施設に送ったり自宅療育のためにセラピストさんを家に呼んだりし、ほかのきょうだいたちをスポーツのレッスンに送迎し、週末は日本語補習校に子供を通わせ、日曜日は他の親御さんたちと連絡を取り合ってプレイデートだの誕生日パーティーだのをやり・・・・・・その日の予定を間違いなくこなすため、何時にどこに自分がいればいいのかを毎朝毎朝予定表をチェックして数回シミュレーションしてから一日を始める」、
たった一年前はそんな毎日だったのに。

学校も課外活動も、人と会うことも、療育もいきなり何も無くなって、予定表はスカスカ。毎日合計2時間以上も車に乗って、あちこち駆けずり回るストレスからもいきなり解放されたのはよかった、だけど・・・
気づいてみたら、家族が増え始めてからずっと何年もかけてコツコツつけてきた「予定をこなす気力・能力」みたいなものがすっかり衰えた。

あっという間に、本当に、衰えた。

一年前の自分が、自分に思えない。日記を読むと「・・・誰?」状態。
もう前やってたことができる気がしない。
一度止まっちゃうと、もうそこまで走ってきたこと自体がどうでもよくなってしまうというか。

どうやってこの衰えた何かを取り戻したらいいのか。

それに、びっしりだった予定がスカスカになって、この一年その時間で何か有意義なことしたっけ?
「もっと時間があったら家のあそこを片付けてここを掃除して、家族にももっと余裕のあるやさしい態度をとって、心をこめて料理して、本もたくさん読んで、文章もたくさん書けるのに」
いつも心でそうやってブーブー言ってませんでしたっけ?
そのうちのひとつでもやったの?  
大声で「No」です。

結局、なんか大幅に衰えただけ。

一年で別人、スカリー2.0になった。2.0なのに劣化して退行している。

なんて素敵な一年だったんでしょう。

ダメ人間の成長とか能力の維持のためには、ある程度のストレスって必要なんだと悟りました。ほっといたら水は低きに流れる。簡単に、あっという間に。

この一年、ふってわいた時間を大切に使って成長し、成果を上げた方、または休みたくても休めず働き続けた方。爪の垢送って下さい。ダメ人間卒業できるんなら煎じて飲む。足の爪はきついけど、手指ならなんとか頑張れそうな気がする。

ああ~明日こそは明日こそは、療育の申し込みとスイミングの申し込みと、春休みをどうするのか決めるのと職探しと・・・きちんとやろう、やらなくちゃ。

でもまあ、まだだいじょうぶかな。来週でも間に合いそうだし、来週中にやろう・・・。

お題「#この1年の変化