アメリカでみんなの心を温かくした、あの「いい話」の悲しい結末
That's what grandma's do...Feed every one.
(From Jamal Hinton's Twitter)みんなにご飯を食べさせるのが、おばあちゃんってもんよ。
Image by Terri Cnudde from Pixabay
Twitterで、「How it started How it's going」っていう「こうして始まり、現在ここ」みたいなやつ流行っていますね。
昨晩は、未来のファースト・レディかもしれないジル・バイデンさんもそのツイートをやっておられました。
How it started: How it's going: pic.twitter.com/8IiIHfXCn0
— Dr. Jill Biden (@DrBiden) October 12, 2020
ジョー・バイデンもジルさんも若い! アナログ写真の色褪せた感じがお二人の過ぎた歳月の長さを物語っています。
しかし、数ある「how it started how it's going」の中で、やはり皆さんが「ああ~これがあったねえ!」となったのは、アリゾナ州の青年ジャマル・ヒントン君のやつでしょう。
how it started how it’s going pic.twitter.com/qQkWqNWMzs
— Jamal Hinton (@kingjamal08) October 9, 2020
知らない人にはなんのこっちゃですが、これは2016年の感謝祭(サンクス・ギヴィング・デイ)の頃にアメリカを温かくしたとあるハプニングなのです。
ある日、当時高校生だったジャマル君の電話に、
「感謝祭のディナーは私のうちで11月24日3時から。みんな来てね!」
という見知らぬ番号からのテキストメッセージが。
以下二人のやり取り。
ジャマル君「誰っすか」
謎の相手「あんたのグランマよ」
ジャマル君(まさか俺のばあちゃんついにテキスト送れるようになったのか・・・?違うよな・・・?)
ジャマル君「写真送って」
謎の相手「誰の?」
ジャマル君「おばあちゃんのだよ(笑)」
そしてジャマル君に送られてきた写真は、会ったこともない白人女性。すかせず、自撮りをどーんと送り返すジャマル青年。
「あんた、俺のばあちゃんじゃないから」
そして、ふざけてこう付け加えたのです。
「でも食べにいってもいーい?」
これに対する、その見知らぬ女性の返信が・・・。
「もちろんどうぞ! みんなにご飯食べさせるのがおばあちゃんってもんよ」
ジャマル青年は、この返信が嬉しかったのか、ネットに「どっかのグランマが大変なことになっとるどー!」と二人のやりとりのスクショをアップ。人種や年齢を越えた二人のほほえましいやり取りが一気にネットに広がりました。
この女性は、ワンダ・デンチさんというジャマル君と同じくアリゾナに住む普通のお方。2016年、既に社会の分断が決定的に深まり殺伐としていたアメリカでみんな暖かさに飢えていたのか、彼女のもとには「見知らぬ(黒人)青年にやさしい言葉をありがとう」というお礼や賞賛の電話が殺到。電話番号を変更を余儀なくされたものの、ジャマル君のワンダさんちの感謝祭ディナーへの参加は実現。
その後もジャマル君とワンダさんたちは交流を続け、毎年恒例となった感謝祭のディナーや、パンプキン農場へのお出かけなどの楽しい写真がネットにアップされ、人種や世代を超えて友情を育む彼らの様子がたくさんの人に喜ばれていました。
しかし・・・
今年の春、ワンダさんとワンダさんの夫ロニーさんはコロナウィルスに感染。ロニーさんは助からず他界されました。
ネットに上がっているいろんな画像で、ジャマル君やワンダさんと楽しそうにしているロニーさんの笑顔が悲しい。残念でなりません。今年の感謝祭のディナーではぽっかりとひとつ席が空いてしまうのですね。ディナーすら実現しないかもしれません。
こういう悲しい話がたくさん聞こえてきます。
皆、誰かの大切な人なのです。
皆、もっと生きたかった人たちなのです。
つい最近、「私はコロナに打ち勝った。コロナを恐れるな。」と報道陣の前でマスクを張り切って外しておられた方がいらっしゃいましたが、あの方は、大切な人を亡くして悲しんでいる方々の顔にそうした言葉をぶつけている、ということを考えたことがないのでしょうか。
誰かを愛したことがないのかな。
それでも、アメリカの半分くらいはあの方を支持する。
私はなんでこんなところにいるんだろうなーと、最近ふと虚しさを感じてしまうことが多いです。